イタリア憲兵がお手柄! 窃盗団が発見した「知られざる11世紀の教会」を無事奪還
イタリアのカラビニエリ(国家憲兵隊)の文化遺産保護部隊は、ナポリの住宅の地下にある11世紀の教会を見つけて盗掘しようとした窃盗団を、数カ月に渡る捜査の末に摘発した。
イタリアの国家憲兵・軍警察にあたるカラビニエリの文化遺産保護部隊は、ある窃盗団がナポリの住宅の地下7メートルに11世紀の教会を見つけ、トンネルを掘って盗掘しようとしたところを検挙したと発表した。カラビニエリのおかげで、考古学者や美術史家にも知られていなかった歴史的に重要な教会が救われることとなった。教会の床は白い大理石で出来ており、壁には玉座に座ったキリストの姿と装飾が描かれた保存状態の良いフレスコ画も残っていた。
アートネットが伝えたところによれば、この教会は、地元の「起業家」と称される人物が率いる窃盗団によって発見されたという。起業家は、教会の上にある2つの物件の地上階と地下階を所有していた。当局の報告書によると、この起業家は、近所の地下鉄の建設工事中に別の教会が偶然発見されたことから、自宅の地下にも考古学的に価値のある遺跡がある可能性に気づいたようだ。
窃盗団は、日中を中心に数カ月穴を掘り続け、建造物の崩壊を防ぐためにコンクリート柱まで設置した。建物の住人から騒音などの苦情は出なかったが、カラビニエリの文化遺産保護部隊は見逃さなかった。チームは建物に張り込み、起業家の電話を盗聴。そして彼が箱一杯の資料を運んでいるのを見て疑いが確信に変わったという。
チームの主任であるマッシモ・エスポジートは、「常に情報を収集することが不可欠です。私たちはイレギュラーな建設活動の情報を入手し、記録を調べると、この物件や付近で工事の予定がないことが分かったため、それが違法な発掘ではないかと直感しました」と当時を振り返った。
起業家はその他にも物件を所有しており、捜査当局は、そこから地下トンネルを使った組織的な違法発掘ネットワークを運営していたと見ている。現に、物件の1つからは18世紀の宮殿の基礎部分に通じる通路が見つかっている。このシステムを通じて、窃盗団は貴重な美術品を収集し、いずれは売却するつもりだったと考えられる。起業家の家からは、ローマ時代と中世の陶器の破片約1万点のほか、テラコッタ製のオイルランプやパイプ、アンフォラ、ローマ時代と中世のコインなど、453点の損傷のない美術品も発見された。
カラビニエリの2024年は多忙な一年だった。12月にはプーリア州とラツィオ州で国際的な密売組織に関与していた4人を逮捕した。そして11月にはトスカーナ州のエトルリア人のネクロポリスから盗まれた850万ドル(約13億円)相当の貴重な美術品の回収に成功した。
エスポジートは、今回見つかった11世紀の教会が一般公開されることを願っている。彼は、「これは常に究極の目標です。イタリアは文化遺産に恵まれた屋外博物館です。そのため私たちの仕事は非常に困難ですが、イタリアの財産が犯罪者から返還されるよう、情熱を持って取り組んでいます」と語った。