国際作戦「パンドラ VIII」発動。欧州25カ国が結集し85人を逮捕、6400点以上の文化財を回収
文化財の不正取引を抑制することを目的に欧州諸国が一丸となって年1度実施する国際作戦「Pandora」がこのほど行われ、85人の逮捕者と、約102億円相当のスキタイの文化財を含む6400点以上が回収された。
2016年にスタートした国際作戦「Pandora」は、欧州域内における犯罪脅威に対する多面的プラットフォーム「European Multidisciplinary Platform Against Criminal Threats(EMPACT)」における年次法執行活動であり、国際的な協調努力によって文化財の不正取引を抑制することを目的としている。この第8回目となる「Pandora VIII」がスペインの国家警察グアルディア・シビルの主導のもと欧州25カ国で同時に実施された。
Pandora VIIIの参加国は、アルバニア、オーストリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、チェコ共和国、クロアチア、キプロス、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、マルタ、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、セルビア、スウェーデン、ウクライナ、イギリスなど。作戦を進めるにあたり、国際刑事警察機構(インターポール)が、盗難美術品データベースとID-Artモバイル・アプリケーションを通じて情報交換を促進し現場の警官をバックアップ。また、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は、参加国間の効果的なコミュニケーションと協調を確保するため、分析および運営上の支援を行った。
その結果、85人の逮捕者と6400点以上の文化財の回収に繋がった。インターポールによれば、この作戦では空港、港、国境、オークションハウス、美術館、個人の邸宅などで数千件のチェックが行なわれたという。さらに6000件のオンライン・チェックが実施され、580点の盗品を回収した。現在113件の刑事事件と137件の国や自治体を相手取った行政事件が進行中で、さらなる逮捕と押収が見込まれている。
その中でも大きな成果を紹介すると、スペインとウクライナの協力によるマネーロンダリングとスキタイの文化財の不正取引に関連した捜査で、当局が6500万ドル(約102億円)以上に相当する黄金製のアイテム11点を回収した。 また、イタリアの国家憲兵隊カラビニエリは2000点以上の陶磁器や石器に加え、16万3000ドル(約2600万円)相当の現代絵画を押収した。
そして、ルーマニア警察は、教会から盗まれネットで販売されていた19世紀のイコンで覆われた木製の壁イコノスタシス、ブルガリア関税庁は432枚の古代コイン、ギリシャ国家警察であるヘレニック警察は43個の古代の陶器アンフォラを押収し2人を逮捕した。また、ポーランド国家警察は、象牙製のものを含む229点の遺物を回収し、その総額は15万2000ドル(約2400万円)を超えた。スペインのコルドバ市民警備隊は、古代の石器、陶器、金属片を含む350点の個人コレクションを押収した。
フランス当局は、ベトナム人画家マイ・トゥーの不法に輸出された18万2000ドル(約2900万円)相当の絵画を押収。チェコ国家警察は、1994年にジーモフ最後の晩餐礼拝堂から盗まれた、1658年から1660年にかけて制作された聖バルトロメオの木像を回収し、像は持ち主に返還された。(翻訳:編集部)
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