ハウザー&ワースと小規模ギャラリーのパートナーシップ第二弾! 共同支援を行うのは気鋭の画家、アンベラ・ウェルマン
メガギャラリーのハウザー&ワースが、若手ギャラリーと共同で新進アーティストを扱う「コレクティブ・インパクト」パートナーシップの第二弾が明らかになった。今回対象となるのは、ニューヨークのカンパニー・ギャラリーと、カナダ
のノバスコシア出身でニューヨークを拠点に活動する具象画家のアンベラ・ウェルマンだ。ハウザー&ワースの共同社長を務めるマルク・パイヨは、US版ARTnewsの取材にこう答えた。
「アンベラ・ウェルマンの作品に興味を持ち、本人やカンパニー・ギャラリーのオーナーであるソフィ・モーナーと話し合った結果、(コラボレーションは)アーティストのためになると同時に、ニューヨークで目覚ましい仕事をしているギャラリーをサポートすることにもなると考えました」
一方、2015年にカンパニーを創設したモーナーは、ウェルマンについて、「共同パートナーシップは、彼女のキャリアを今すぐ後押しすることのできる最強の方法となるでしょう」と述べた。
エロティックな状況を思わせる中で抽象化された身体が絡み合うような絵画を制作しているウェルマンは、現在40代前半。2020年にカンパニーの所属となり、翌年には同ギャラリーで初個展を開催。それ以降も、コレクターのヤン・ビンが運営する上海のアートスペース、ポンド・ソサエティや、アイルランドのベルファストにあるメトロポリタン・アート・センターなどでの個展が続き、昨年4月には、コレクターのパトリツィア・サンドレット・レ・レバウデンゴが1995年に設立したトリノの私設美術館でも個展が開かれている。
モーナーは、共通の目標を達成するための緊密なパートナーシップという考え方に魅力を感じたという。というのも、彼女はかねてからギャラリーの新しいモデルに関心があり、自分のような若手ギャラリーが、成長していくアーティストとどのように協力し続けていけるのかを考えていたからだ。
モーナーは今回のパートナーシップについてこう語る。
「これまでのようなギャラリーのモデルを変えられるのは、ハウザー&ワースのようなメガギャラリーでしょう。アーティストのために何がベストなのか、大手ギャラリーが既成概念にとらわれずに考えるようになれば……。なぜなら、若手ギャラリーから大手に移ることが、アーティストにとって必ずしもベストな選択であるとは限らないからです」
カンパニーは、この10年間にニューヨークでオープンした意欲的なギャラリーの1つで、2021年にマンハッタンのダウンタウンにあった小さなスペースから、チャイナタウン近くのエリザベス・ストリートに移転。今や約370平方メートルの店舗を構えるモーナーは、自分のギャラリーは「常に成長し、拡大し続ける」と言う。
その一方で、カンパニーを去ったアーティストもいる。新しいスペースでの初展覧会は、所属アーティストだったティオナ・ネッキア・マクロッデンのキュレーションによるバーバラ・ハマーの個展だった。しかし、マクロッデンはその後まもなくカンパニーを離れ、中堅ギャラリーのミッチェル=イネス・ナッシュへ、そしてさらに大手のホワイトキューブへと移籍している。
ハウザー&ワースのパイヨは、コレクティブ・インパクト・パートナーシップを「起業家的な発想によるモデル」とし、「新たなエコシステムをサポートする」ことを望んでいるという。さらに、他の大手ギャラリーがこの仕組みに同調してくれたら嬉しいと付け加え、こう述べた。
「それほど目新しいことを始めたとは考えていませんが、うまくいけば、我々のシステムが抱える構造を少しは変えることができるでしょう」
このパートナーシップの第一弾として、ハウザー&ワースは若手ギャラリーのニコラ・ヴァッセルと共同で、先日行われたアート・バーゼル・マイアミ・ビーチに新進アーティストのウマンの作品を出展。その結果をパイヨはこう評価した。
「非常にうまくいきましたし、共同出展したこと自体が、今までとはちょっと違ったやり方ができるかもしれないという、アート界へのメッセージなのです」(翻訳:石井佳子)
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