毛利悠子がカルダー賞を受賞。財団は「観客を引き込み、強い共鳴を呼び起こす力」を評価

日本の現代美術家、毛利悠子が、アレクサンダー・カルダー財団が主催するカルダー賞を受賞した。副賞として5万ドル(約780万円)が贈られるほか、フランス・サシェにあるカルダーの旧スタジオ、アトリエ・カルダーでのレジデンシー滞在の機会が提供される。

毛利悠子。Photo: Lorenzo Palmi

日本の現代美術家、毛利悠子が、アレクサンダー・カルダー財団が主催するカルダー賞を受賞した

2005年に創設され、隔年で授与されるカルダー賞は、国籍やジャンルを問わず、現代美術の分野で独自の表現を切り拓き、国際的な評価を確立しつつある作家に贈られる。受賞者には副賞として5万ドル(約780万円)が授与されるほか、フランス・サシェにあるカルダーの旧スタジオ、アトリエ・カルダーでの3カ月間のレジデンシー滞在の機会が与えられる。また、カルダー財団による、受賞者の代表作を主要な公共美術コレクションへ寄贈するための支援も含まれている。過去の主な受賞者には、笹本晃(2023)、ローザ・バルバ(2019)、トマス・サラセーノ(2009)、タラ・ドノヴァン(2005)らが名を連ねる。

毛利は、身の回りに存在する多様な物質や装置を組み合わせ、空間全体を一つのシステムとして構成するインスタレーションで知られる。代表作には、駅構内の水漏れ対策の道具やシステムを発想源とした「モレモレ(Moré Moré)」シリーズや、日用品や機械を用い、「循環」や「反応」を主題とする《I/O──ある作曲家の部屋》、時間とともに朽ちていくフルーツの「声」をセンサーやマイクで捉える「Decomposition」シリーズなどがある。2023年の光州ビエンナーレでは、白い長い紙を波状に垂らし、空間のさまざまな条件と相互に反応するインスタレーション《I/O 2011–23》を展示した。

2024年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館では、建物全体を用い、家具、配線、配管、照明、楽器、果物など多様な要素を接続したインスタレーション《Compose》を発表。彼女のマキシマリズム的な実践を象徴する展示となった。毛利の展示は、その年の国別パビリオンの中でも特に高い評価を受け、2025年にミラノのピレリ・ハンガービコッカで開催された展覧会をはじめ、国際的な美術館での展示が相次ぐきっかけとなった。同展は毛利にとって過去最大規模の個展であり、この3月にはスペインのセントロ・ボティンへと巡回する予定だ。

さらに今年は、マイアミのバス・ミュージアムやロンドンのバービカン・センターでの展示も控えている。2月19日からは、ニューヨークのタニヤ・ボナクダー・ギャラリーでの初個展が開幕する。

毛利の選出について、カルダー財団会長のアレクサンダー・S・C・ローワーは声明で次のように述べている。

 「毛利悠子の作品は謎めいていながらも親しみやすく、時間、空間、そして重力や音、空気、光といった目に見えない力など、多くの偶発的要素に左右されるリアルタイムの体験へと鑑賞者を巧みに引き込みます。私の祖父(アレクサンダー・カルダー)の作品との類似点を見いだすことは容易ですが、毛利の美意識は強い共鳴を呼び起こします。彼女の実践が進化し発展していくなかで、美術史に対して今後どのような貢献をしていくのかを楽しみにしています」(翻訳:編集部)

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