2025年「天才賞」フェローシップが発表! アート分野は6人が選出、賞金は1億1800万円

芸術や文化、教育、社会、経済などの分野で活躍する人を対象とした、アメリカ最大級のフェローシップ、マッカーサー財団「天才賞(Genius Grant)」の受賞者22人が10月9日に発表された。

天才賞を受賞したギャレット・ブラッドリー。Photo: Rich Polk/Getty Images for IMDb

芸術や文化、教育、社会、経済などの分野で活躍する人物を対象とした、マッカーサー財団「天才賞(Genius Grant)」のフェローシップ受賞者22人が10月9日に発表された

アート分野からはギャレット・ブラッドリー、ガラ・ポラス=キム、トゥアン・アンドリュー・グエン、ジェレミー・フレイ、マット・ブラック、トニカ・ルイス・ジョンソンの6人が選ばれた。各フェローには、5年間にわたって総額80万ドル(1億1800万円)の奨学金が支給される。

同賞は対象年齢を設けていないのも大きな特徴だ。過去10年の受賞者の中にはマリア・マグダレーナ・カンポス=ポンス、キャロリン・ラザード、トニー・コークス、ウェンディ・レッドスター、ジェフリー・ギブソンといったアーティストが名を連ねており、昨年MoMA PS1で回顧展が開催されたラルフ・レモンや、今月からウォーカー・アート・センターで展覧会が始まるダイアニ・ホワイト・ホークなど天才賞受賞がきっかけで活躍の場を広げるアーティストは多い。

今年天才賞を受けたギャレット・ブラッドリーはアート作品と同様に映画作品を制作しており、夫を刑務所から解放しようとする1人の女性の姿を描いたドキュメンタリー『Time』(2020)でアカデミー賞にノミネートされたことでも知られている。同作は、ほかの作品同様に、何世紀にもわたる抹殺と権利剥奪の歴史に抵抗するアフリカ系アメリカ人が登場する。ブラッドリーは以前、US版ARTnewsの取材に対し、自身の作品は次のような問いを投げかけていると語っている

「わが国で何百年もの間、黒人や褐色人種の家族を体系的に分離した結果、何が起こるのでしょうか?」

ガラ・ポラス=キムは、リサーチや研究を重ねる学際的なアーティストだ。博物館の出所不明の遺物とドローイングや彫刻を組み合わせたインスタレーション作品を通して、美術館・博物館という機関の概念をより広く考察し、作品が美術館に収蔵され、展示される際に、どんな情報が伝えられ、また隠されるのかを問うている。

ベトナム系アメリカ人のトゥアン・アンドリュー・グエンは、映像や彫刻作品を通して戦争や追放という世代を超えたトラウマと格闘するコミュニティの歴史を描く。その題材は彼の故郷であるベトナムから、フィリピン、セネガル、パプアニューギニア、そしてアメリカ合衆国まで多岐に渡る。彼はかつてアート・イン・アメリカのインタビューで、「無形の物語と非常に具体的な物体」への興味を語っている

北アメリカの先住民族ワバナキ族の7代目籠職人でもあるジェレミー・フレイの作品は、コネチカット州グリニッジのブルース・ミュージアムで開催中のミッド・キャリア展など、美術館で広く紹介されている。 トウヒの根やスウィートグラスなどの素材を使い、ワバナキの伝統に由来する技法でバスケットを編み、時間の経過とともに失われる恐れのある先住民の知識を守り続けている。

写真集団マグナム・フォトのメンバーであるマット・ブラックは、アメリカ各地の辺境コミュニティに生きる人々や風景を記録する写真家だ。独特のモノクロ写真を通して、彼は観る者にアメリカの貧困の蔓延と、それが多くのアメリカ人の日常生活に与える影響に向き合うよう迫る。写真家で、社会正義を追求するアーティストでもあるトニカ・ルイス・ジョンソンはシカゴの市街地の俯瞰図を撮影し、グリッドで分析することで、主に白人住民が北側、黒人住民が南側の地域で暮らす姿を明らかにする。

同賞のアート分野以外の受賞者は、小説家のトミー・オレンジ、地図製作者のマーガレット・ウィケンズ・ピアース、天体物理学者のカリーム・エル・バドリーらがいる。(翻訳:編集部)

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