エゴン・シーレ風AI生成画像が拡散。実在作品のタイトル使用が招く「美術史の歪曲」に懸念高まる

赤裸々な表現で独自の世界を作り上げた夭折の鬼才画家、エゴン・シーレ。その有名作品と同じタイトルのAI生成画像がSNSで拡散され、誤った認識を与えるものとして注意喚起されている。

エゴン・シーレの実在する作品のタイトルで投稿されたAI生成画像。Photo: @lovedropx

20世紀初頭のオーストリア表現主義を代表する画家、エゴン・シーレの有名な水彩作品に、《Seated Woman with Bent Knees(膝を曲げて座る女)》がある。最近、それとはまったく異なる絵柄のAI生成画像が同じタイトルでX(旧ツイッター)に投稿され、30万近い表示回数を獲得。それに対し、怒りや注意喚起の声が上がっている。

投稿主は約29万人のフォロワーを持つ@lovedropxというアカウントで、普段は感動を呼ぶ名言などを活発にポストしている。問題の画像には黒いドレスとニーソックス姿の女性がシーレの素描風のタッチで描かれ、1917年に制作されたシーレ作品と同じタイトルが付けられている。しかし、紙に水彩、グアッシュ、クレヨンで描かれた本物の作品の女性は緑色のトップスと黒のストッキングを着けており、ポーズも違う。

@lovedropxのフォロワーの多く(おそらく本人も)は、これがシーレの作品だと信じたようだが、間違いに気づいたXユーザーもいた。ある美術関係者は、絵の「モデル」のメイクや髪型、ネイルがシーレの時代と合っていないだけでなく、指が6本あることを指摘。さらに、この画像を問題視した@nomadic_anaisのポストへのリプライにあるように、この画像にはシーレの特徴である挑発性が少しも感じられない。

シーレの作品としてSNSに投稿されたAI生成画像はほかにもあり、フェイスブックで名画のフェイク画像に対する注意喚起をしているアカウント、「The Art Detective(アート探偵)」は、2024年12月にこんな投稿をしている。

「エゴン・シーレに『インスパイアされた』新たなAI作品に気をつけよう。AI生成画像であることが示されているものもあれば、そうでないものもある。これは近頃よく見られる現象だ。有名な芸術作品に基づいてAI画像を生成するのは極めて容易だからだ」

本物とは異なる《Seated Woman with Bent Knees》の投稿に、28万を超えるインプレッション数と6700近い「いいね」が付いたことに対し、アート界ではSNS上のフェイクコンテンツが美術史の真実を歪曲してしまうのではないかという懸念が高まっている。幸い、現在この画像のポストには、AIで生成されたものであることが記載されたコミュニティノートが付いている。(翻訳:石井佳子)

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