今週末に見たいアートイベントTOP5:建築の可能性を問う藤本壮介の回顧展、クレス・オルデンバーグの彫刻と版画が一堂に
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. 藤本壮介の建築:森・未来・原初(森美術館)
藤本壮介の30年に渡る仕事を網羅
2025年大阪・関西万博の象徴である大屋根リングの設計者としても知られる建築家、藤本壮介の初となる大規模個展。1971年北海道生まれの藤本は東京とパリ、中国の深圳に設計事務所を構え、これまで武蔵野美術大学図書館(2010)、サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン(2013)、集合住宅のラルブル・ブラン(2019)など、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地で様々なプロジェクトを手掛けてきた。
本展では、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで、8セクションで網羅的に紹介し、約30年にわたる歩みや建築的特徴、思想を概観する。展示には、模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、モックアップなども含まれ、建築の知識を持った人だけでなく、誰もが藤本建築のエッセンスを体感できるよう工夫されている。さらに、藤本が提案する未来の都市像を通して、建築の存在意義や可能性についての考察も試みる。
藤本壮介の建築:森・未来・原初
会期:7月2日(水)〜11月9日(日)
場所:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
時間:10:00〜22:00(火曜は17:00まで、入場は30分前まで)
休館日:なし
2. サリーナ・サッタポン個展「When you find you in the middle of emptiness」(√K Contemporary)
気鋭の若手作家が提示する「休息」と「内省」の必要性
タイ出身で現在は東京を拠点に活動する若手アーティスト、サリーナ・サッタポンの個展。サリーナは、タイの少数民族に生まれ、バンコクのシラパコーン大学にて修士号を取得後、今春に東京藝術大学グローバルアートプラクティス専攻で博士号を取得した。近年では 2022年にCAF賞最優秀賞、2024年にはTokyo Midtown Award 2024準グランプリを受賞するなど、その評価は年々上昇している。
サリーナの作品群は、社会の隔絶や格差など、都市生活において見て見ぬふりをしがちな事象を可視化し、意識下に定義する力を持っている。本展で発表する新シリーズ「When you find you」は、これまでの作風とは異なって抽象的であり、鑑賞者を包み込むような温かさを持っている。この作品を通してサリーナは、「小休止」することの大切さを感じてほしいと語る。絶え間なく進化し続ける社会に生きる現代人にとって「立ち止まる」のは難しい行為なのかもしれない。だが成長し、前に進むためには「休息」と「内省」が必要なのだとサリーナは提示している。これにちなみ7月26日の15時からサウンドセラピストとして活動するHiko Konamiを迎えて、音叉、チャイムなどを用いて参加者を深いメディテーション状態へ導くイベントを開催する。
サリーナ・サッタポン個展「When you find you in the middle of emptiness」
会期:7月5日(土)〜8月2日(土)
場所:√K Contemporary(東京都新宿区南町6)
時間:13:00〜19:00
休館日:日月
3. We Are The World(CON_)
2人の若手作家が現代社会を考察
佐藤亮太郎とプリウス・ミサイルによる2人展。佐藤亮太郎は1999年生まれのアーティストで、資産として流通するデータを収集し、写真、映像、ゲームなどのイメージを参照しつつ編集することで今日のインターネット社会を描写する作品を制作している。
プリウス・ミサイルは1998年香港生まれ、東京育ち。人工音声や君が代といったモチーフを通じて、国家や制度、社会的背景を内包した音響と、文化的コードとしての音楽を行き来しながら、楽曲、映像、立体作品によるプロジェクトを展開している。本展では、2人による新作を発表。現代社会を生きる私たちへの示唆に富むものとなるだろう。
We Are The World
会期:7月11日(金)〜8月17日(日)
場所:CON_(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 まるかビル4F)
時間:14:00〜19:00
休館日:月火水祝
4. 感星のように見る(ANOMALY)
12人のアーティストが促す世界への再考
ギャラリーの所属作家7人と、彼らや同ギャラリーと普段から交流を持つゲストアーティスト5人によるグループ展。出展作家は、青木野枝、淺井裕介、大木裕之、マキ・ナ・カムラ、衣川明子、斎藤玲児、佐々木類、長島有里枝、潘逸舟、東山詩織、樋口亜弥、渡辺豪。
本展は、ポストコロニアル・フェミニズム理論で知られる文芸評論家のガヤトリ・C・スピヴァクが提唱した「惑星思考」が起点となっている。12人のアーティストの視点を通じて、現代社会における加速度的な変化の中で見過ごされがちな事象や関係性に目を向け直し、⼈間/⾮⼈間や⽂化/⾃然の⼆項対⽴を超えた「⽣」の新たなビジョンを模索。世界への再考を促す。
感星のように見る
会期:7月12日(土)〜8月9日(土)
場所:ANOMALY(東京都港品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex I 4F)
時間:12:00〜18:00
休館日:日月祝
5. クレス・オルデンバーグ「いろいろ」(Paceギャラリー)
「ポップアートの巨匠」の多彩な表現
アメリカのポップアートの巨匠、クレス・オルデンバーグ(1929-2022)。オルデンバーグは1964年に同ギャラリーで初個展を開催し、以来60年以上に渡って日用品の中に美や意味を見出し、それらを芸術の対象として再構築してきた。
同ギャラリー代表のマーク・グリムシャーと、オルデンバーグの娘、マーチャ・オルデンバーグがキュレーションする本展は、1960年代から2000年代半ばにかけて制作されたシリーズ作品に注目。塗装した段ボールで制作した《N.Y.C. Pretzel》(1994)のマルチプル作品約60点や、縫製されたキャンバス素材による《Mouse Bags(マウス・バッグ)》(2007‒17)などの彫刻と版画が一堂に集まる。
クレス・オルデンバーグ「いろいろ」
会期:7月17日(木)〜8月23日(土)
場所:Paceギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 1-2F)
時間:11:00〜20:00(19:00~、日曜は18:00~アポイントメントのみ)
休館日:月曜