ドレス200点で辿るエリザベス女王の生涯──史上最大の展覧会が来春バッキンガム宮殿にて開催
イギリスのロイヤル・コレクション・トラストは、エリザベス女王(1926-2022)の生誕100周年となる2026年に史上最大規模の衣装展をバッキンガム宮殿で開催すると発表した。

故エリザベス女王の生誕100年を記念し、2026年春に史上最大規模の衣装展「エリザベス2世:スタイルに生きた人生」がバッキンガム宮殿のキングス・ギャラリーで開催されると発表された。
ロイヤル・コレクション・トラストが主催する同展は、誕生から王女、女王時代まで、イギリス史上最長の治世を誇った君主の物語を200点の衣装で辿る。約半数が初展示だという本展の中でも注目は、1947年の結婚式と1953年の戴冠式で着用したドレス。2点とも英国王室から絶大な信頼を得てエリザベス女王のファッションを支えたクチュリエ、ノーマン・ハートネルが手掛けている。結婚式のドレスはボッティチェリの絵画《プリマヴェーラ》から着想を得ており、銀糸で刺繍された花輪や、クリスタル、1万個以上のシードパールで飾られている。また、戴冠式用ドレスは「ウエディングドレスと同じスタイルで、白のサテン生地であること」というエリザベスの注文のもと作られ、イギリスを構成するイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに敬意を表して、各国の花であるチューダーローズ、アザミ、リーキ、シャムロックの紋章があしらわれた。
エリザベスは幼少期から国内の報道機関に注目されており、彼女のファッションは常に詳細に分析されてきた。女王即位後も、国民の母、国家元首、通貨と切手の象徴、公式肖像画、儀式の演者として常に「見られる」ことが義務付けられていた。彼女自身、かつて「信じられるためには見られなければならなかった」と語っている。
それを受けてエリザベスは、1960年代後期のカラーテレビの出現とともに、明るいブロックカラーとシンプルなデザインを取り入れるなど、色彩の効果を巧みに取り入れるようになる。2020年4月、パンデミックの不安が広がる中でイギリス国民に語り掛けた際には、癒しと愛と保護を意味するターコイズのブローチを身に着けていた。
また彼女は、衣装を暗号言語として外交に活用することもあった。象徴的な例は1961年のパキスタン・カラチでの国賓晩餐会のためにハートネルがデザインした白いガウンで、背中にはパキスタンの国の色である翠緑色のひだを走らせている。
展覧会についての声明で、キュレーターのキャロライン・ド・ギトーは、「エリザベス女王の長い治世において、彼女の独特なスタイルは世界中で瞬時に認識され、世代を超えたデザイナーに影響を与えました。女王のファッションアーカイブがロイヤル・コレクション・トラストの管理下に入ったことで、彼女の服に対する深い理解と、その服が持つソフトパワーを実感しながら、生涯にわたる思慮深いスタイルの選択の物語を語ることができるようになったのです」と語る。
そのほか展覧会では、エリザベスが8歳の時に叔父のケント公とギリシャのマリナ王女の結婚式で着用したブライズメイドドレスや、1970年代にイアン・トーマスがデザインした鮮やかな色彩のプリント生地のドレス、プライベートで着用された乗馬ジャケットやタータンスカート、シルクのヘッドスカーフも展示される。