3万円で買ったダリの真作、いくらで落札?「お宝鑑定番組マニア」の掘り出し物がオークションへ

お宝鑑定番組マニアが2023年にイギリスの家財整理セールで150ポンド(現在の為替で約3万円)で購入した絵画が、サルバドール・ダリ(1904-1989)の真作と判明した。本作は、10月23日にオークションに出品される。

サルバドール・ダリの真作と判明した水彩画。Photo: Courtesy of Cheffins.

イギリス・ケンブリッジで2023年に行われた家財整理セールで競売にかけられ、150ポンド(現在の為替で約3万円)で落札された絵画がサルバドール・ダリの真作と判明した。

ガーディアンが伝えるところによると、絵画を落札したのは60歳の匿名の骨董商。オークションではダリ作と銘打たれていたが誰も関心を示さず、ライバルはわずか1人だった。骨董商は絵画の隅にダリの署名を確認してはいたものの本物か判断できず、最終的にはBBCのお宝鑑定番組「Fake or Fortune」を何年も熱心に見続けて培った「見る目」に賭けて購入に臨んだという。

そして購入後、絵画の裏面に驚くべきものを発見した。1990年代にサザビーズのオークションに出品されたことを証明するステッカーが貼られていたのだ。骨董商は「自分が見ているものが信じられませんでした」と当時を振り返った。

骨董商はサザビーズの競売カタログを追跡し、ダリの作品として認定されていたことを確認。地元のオークション会社、Cheffinsに持ち込んだ。同社がダリ専門家のニコラス・デシャルヌにさらなる鑑定を依頼し、絵画は真作と証明された。

水彩絵の具とフェルトペンで、『アラビアン・ナイト』の一場面であるターバンを巻いたスルタンの姿が描かれた38センチ×29センチのこの絵画は、1966年にダリが制作した《Vecchio Sultano》だった。ダリのパトロンであったジュゼッペとマーラ・アルバレット夫妻が依頼したもので、イタリアの出版社リッツォーリが出版を計画していた本の挿絵に用いられるはずだった。しかし、ダリは予定していた500点のうちわずか100点を完成させただけでプロジェクトを放棄。残された100点の半分はリッツォーリ社に保存されたが散逸し、残りはアルバレット夫妻の手に残り、後に彼らの娘でダリの養女でもあるクリスティーナが相続した。その後2014年に、残された50点の挿絵で本が出版されている。

真作と鑑定された《Vecchio Sultano》は、リッツォーリ社に残された1枚と考えられ、絵画は10月23日にCheffinsで行われるオークションに予想落札価格2万~3万ポンド(約400万円~600万円)で出品される

今回の発見について、Cheffinsの美術専門家ガブリエル・ダニーはテレグラフの取材に対し、「美術界において、作者の帰属が失われることは非常に稀なことであり、ダリの研究家にとっても重要な再発見と言えます。さらに、ダリによる水彩画は珍しく、彼の異なる一面を示す貴重な作品となるでしょう」とコメントした。

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