十数万円の絵はターナー17歳の作品だった! 予想落札額5000万円超でサザビーズがオークションへ

イギリス・ロマン主義を代表する風景画家、J.M.W.ターナー(1775-1851)が17歳で描いた油彩画が約150年ぶりに再発見され、7月にサザビーズでオークションに出品される。予想落札価格は、20万から30万ポンド(約3900万〜5900万円)。

再発見されたJ.M.W.ターナーの初期作品には、ブリストル郊外の風景が描かれている。Photo: Courtesy Sotheby's

今年生誕250年を迎えた風景画の巨匠、ウィリアム・ターナーが17歳で描いた《The Rising Squall, Hot Wells, from St Vincent’s Rock, Bristol(ブリストルのセント・ヴィンセント・ロックから見た湧き上がる嵐雲とホットウェルズ)》は、約150年もの間、別の作家のものと考えられてきた。

英ガーディアン紙によると、昨年この絵は、18世紀の無名の画家(やはり18世紀の風景画家、ジュリアス・シーザー・イベットソンの影響を受けていたとされる)の作品としてオークションに出品された。

その競売でオークションハウスのドリューウェッツが付けた予想価格は600から800ポンド(約12万〜16万円)だったが、落札後に作品の汚れを落としたところ、ターナーのサインが浮かび上がったのだ。

7月に同作品をオークションに出品するサザビーズは、ターナーの初期の画業に新たな光を当てるものだと評価している。1793年にイギリスのロイヤル・アカデミーに出展されたこの絵は、ブリストル近郊のエイボン峡谷に立ち込める嵐雲を背景に、17世紀末からリゾート地として人気を博していたホットウェルズ・スパを前景に捉えている。なお、その後エイボン峡谷にクリフトンの吊り橋が架けられ、スパは取り壊された。

この作品でターナーは、油彩で水彩の透明感を出そうとしており、後の成熟した作風につながる革新性を示唆している。サザビーズ・ロンドンのシニアディレクター、ジュリアン・ガスコインはガーディアン紙の取材に、「ターナーに関するこれまでの言説の一部が書き換えられるでしょう」と述べている。

絵の最初の持ち主で、ターナー初期のパトロンだったロバート・ニクソン牧師は、おそらくターナーの父親が営んでいた理髪店でこの絵を購入したのだろう。しかし時を経て、作者に関する誤解が生まれたことで作品は姿を消してしまった。

公の場に展示されるのは167年ぶりという《The Rising Squall, Hot Wells, from St Vincent’s Rock, Bristol》は、7月2日のオークションに先立ち、今月末にサザビーズ・ロンドンでお披露目される。(翻訳:石井佳子)

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