クリスティーズ職員が大手柄! 「直感」でターナー作品と見抜いた作品がオークションへ
クリスティーズのオンライン鑑定サービスに依頼があった1枚の水彩画が、希少なJ.M.W.ターナー(1775-1851)の作品と判明。2月4日に開催されるオークションに出品される。予想落札価格は30万ドルから50万ドル(約4700万円~7900万円)。
クリスティーズのオンライン鑑定サービス「request an estimate」に依頼された水彩画が、希少なJ.M.W.ターナーの作品だと分かった。2005年に開始された同サービスは、作品の購入履歴などの情報と画像を3枚クリスティーズに送り、詳しい鑑定が必要な場合は同社から連絡が来るという仕組みだ。
クリスティーズのイギリスの素描・水彩画の専門家であるロージー・ジャーヴィーは、「提出された水彩画の画像は粗く、緑がかった色合いの古いガラスに覆われていました」と絵画の第一印象を語った。だが、「力強い筆遣い、線の簡潔さ、色使いから、これはきちんと見なければならないという直感が働いた」という。
嵐が迫る海辺を描いたこの絵画は、ターナーの《The Approach to Venice or Venice from the Lagoon(ヴェニスへの道またはラグーンからヴェニス)》(1840年頃)であることが分かった。アートニュースペーパーによると、この絵画は1930年頃からイギリスのエンジニア兼収集家ハドソン・C・アダムズの家族が所有しておりカタログ・レゾネにも掲載されていたが、その後、ジョン・ラスキンの作品ではないかという説も出ていた。しかし今回、歴史家のピーター・バウワーが作品の紙を分析したところ、ターナーの遺贈作品の一部であるヴェネツィアの絵画に使用されたものと同じ種類の紙で制作されていることが確認された。
ターナーの水彩画が市場に出るのはめったにない事だ。彼の作品のほとんどは、1851年に亡くなるまで自身が所有し、その後イギリスの国有財産となった。だが、そのうちのいくつかは彼の画商であったトーマス・グリフィスの手元に残っており、この絵画もその一部と考えられる。
ターナー作品と明らかになった絵画は、2月4日にクリスティーズ・ニューヨークで開催される「オールドマスターおよび英国の素描」オークションに出品される。予想落札価格は30万ドルから50万ドル(約4700万円~7900万円)。2023年には、同様のスケッチ画《Sunrise over the Sea, perhaps at Margate》(1845)が予想落札価格が60万~80万ポンド(現在の為替で約1億2000万円~1億6000万円)のところ、手数料込みで(同・約1億9000万円)で落札された。クリスティーズのロージー・ジャーヴィーは、そのことからも、今回は「入札競争になるはずです」と予測する。
最近、クリスティーズのオンライン鑑定サービスで見出された絵画はほかにもある。カリフォルニアの倉庫で発見された絵画が、1815年頃に描かれた、アメリカのフォークアーティスト、アンミ・フィリップスによる両面肖像画だと判明したのだ。肖像画は1月24日に開催されるクリスティーズの「重要なアメリカ文化」オークションに出品される。予想落札価格は4万ドル~8万ドル(約631万円~1264万円)。だがジャーヴィーによると、オンライン鑑定でこのような大きな発見があるのは非常に珍しいという。(翻訳:編集部)
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