約120年も所在不明だった「ロダンの偽物」が実は本物! 《絶望》と題された彫刻が1億4000万円で落札

オーギュスト・ロダン(1840-1917)の贋作と考えられていた大理石彫刻が実は本物と判明し、このほどオークションで86万ユーロ(約1億4000万円)で落札された。

ロダン作《絶望(Le Désespoir)》(1892)ということが判明した大理石彫刻。Photo: GUILLAUME SOUVANT/AFP via Getty Images

オーギュスト・ロダンの偽物と考えられていた大理石彫刻が実は本物であることが判明し、6月8日に行われたオークションに出品された。

86万ユーロ(約1億4000万円)で落札されたこの彫刻は、高さ約28センチで、座った女性が両腕で足を抱えようとする躍動的な姿が描写されている。アートネットによると、この作品は長年、ある住宅のピアノの上に置かれており、持ち主家族はその価値に気付いていなかった。たまたま別件でオークショニアのフィリップ・ルイヤックと息子のエメリック・ルイヤックが住宅を訪れ、ふと彫刻を目にした。家主は「これはロダンの偽物だ」と伝えたが、2人はこの彫刻に並々ならぬものを感じ、ロダンの目録を作成・管理するロダン委員会に調査を依頼することにした。

すると、この彫刻が、ロダンが1892年に制作した《絶望(Le Désespoir)》であることが分かった。同作は、ロダンが1880年から1932年にかけて取り組んだ、200を超える人物像からなる大作《地獄の門》の一部として制作され、1906年にオークションで売却されて以来、所在不明となっていた。

この発見について、ロダン委員会の共同設立者であるジェローム・ル・ブレイはCNNの取材に対して、「全く疑いなく、一瞬で本物だと分かりました」と話す。

オークショニアのフィリップ・ルイヤック(写真右)と息子のエメリック・ルイヤック。Photo: Courtesy Rouillac.
第37回ガーデンパーティーオークションの様子。Photo: Facebook/Rouillac

6月8日、ルイヤック親子はフランス中西部の壮大な邸宅シャトー・ド・ヴィランドリーで開催された第37回ガーデンパーティーオークションに《絶望》を出品。50万ユーロ(約8200万円)からスタートし、最終的にアメリカの若い銀行家によって86万ユーロ(約1億4000万円)で落札された。

ロダン美術館は《絶望》について、「悲しみを表現した作品の多くが両手で顔を覆ったり、身を横たえたりする人物を描いているのに対し、ロダンの彫刻は岩の上に座り、片膝を曲げてもう一方の脚を伸ばそうと力を込める女性を表現しているのが特徴的だ」と解説している。そんな《絶望》は批評家からも好評を博し、ロダンは同じ題材でいくつか素材や大きさを変えて制作した。現在、小さな大理石のものがフィラデルフィアのロダン美術館に、高さ約90センチの石灰岩バージョンがスタンフォード大学のキャンター芸術センターに収蔵されている。

2015年には、サザビーズで高さ約30センチの大理石とブロンズによる《絶望》が、予想落札価格60万ポンド(現在の為替で1億1720万円)に対して78万5000ポンド(同・約1億5000万円)で落札されている。(翻訳:編集部)

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