22万円で買った素描がマグリットの真作だった! 2100万円の予想落札価格でオークションに出品へ
eBayで1580ドル(約22万円)で購入されたルネ・マグリット(1898-1967)のドローイングがオークションに出品されることが判明した。予想落札価格は15万ドル(約2100万円)だ。

匿名の人物がeBayで購入したルネ・マグリットのドローイングがオークションに出品されることが分かったとアートネットが伝えた。
eBay上で「マグリットのドローイング」という名前で出品されている絵画は多数あり、1万円台から数十万円まで値段もさまざま。2024年1月に匿名の人物がeBayで1580ドル(約22万円)で購入したドローイングは日付が入っておらず、3つの巨大な白いチェスの駒が空にそびえ立ち、白い雲がそれを覆い隠している様子をボールペン、鉛筆、色鉛筆で描いている。マグリットはこのイメージを他の作品でも描いており、ロンドンのテートに所蔵されている《The Annunciation(受胎告知)》(1930)もその一つだ。
このドローイングは、かつてマグリットの友人として、法律顧問として、そしてコレクターとして力添えしたハリー・トルツィナー弁護士の右腕的存在、モラ・ヘンスケンスが所有していた。トルツィナーは戦前、母国ベルギーで弁護士をしており、その後第2次世界大戦を逃れてアメリカに渡り、1946年にニューヨークで法律事務所を設立した。 彼はアメリカでベルギーの画家を支援し、マグリットに関する本や記事の執筆、展覧会を企画した上にニューヨーク近代美術館(MoMA)などに作品を寄贈。マグリットは1958年にトルツィナーの肖像画も描いており、ヘンスケンスは1962年にトルツィナーと出会ったようだ。
ヘンスケンスはマグリットが1967年に死去した後、画家の未亡人であるジョルジェット・ベルジェ・マグリットを訪ねた際にこのドローイングを入手し、2022年までヘンスケンスの家族のコレクションとなっていた。 その後、ドローイングはVanDeRee Auctionsを通じて、のちにeBayに出品した所有者に売却された。
このドローイングは、アメリカのオークション会社、Rago/Wrightが5月21日にニュージャージー州ランバートヴィルで開催するオークションに出品される。予想落札価格は、当初の購入価格の100倍近い15万ドル(約2100万円)。
Rago/Wrightのシニア・スペシャリスト兼ファインアート・ディレクターであるジョー・スタンフィールドはオークションのプレス発表の中で、「このような発見はオークションの世界においてよくあることではありません。オークションを通して、伝説的なアーティストの知られざる、あるいは過小評価されてきた作品を再び世に送り出すお手伝いができるのは、とてもエキサイティングなことです。今回、私たちの委託者がeBayでこのマグリットを見つけたことは、このスリルをさらに高めてくれました」と話した。
近年、ルネ・マグリットの作品はオークションで歴史的な高値を記録している。2024年、マグリットの《L'empire des Lumières(光の帝国)》がクリスティーズ・ニューヨークで予想価格9500万ドル(現在の為替で約133億円)に対して1億2120万ドル(同・約170億円)で落札され、シュルレアリスム美術でのオークション新記録を樹立した。