今週末に見たいアートイベントTOP5:「ピタゴラスイッチ」佐藤雅彦初の回顧展、千葉正也が新作29点を発表

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)(横浜美術館)より、イデアの工場(DNP大日本印刷)

1. ポスターでみる映画史 Part 5 アニメーション映画の世界(国立映画アーカイブ)

『バッタ君町に行く』(1941年、日本公開1951年、デイヴ・フライシャー監督)プレス資料 国立映画アーカイブ所蔵
『バヤヤ』(1950年、日本公開2003年、イジー・トルンカ監督)1970年代に作られた学校配給向けプレス資料 国立映画アーカイブ所蔵
『桃太郎の海鷲』(1942年、瀬尾光世監督)プレス資料 国立映画アーカイブ所蔵

世界と日本のアニメ映画の歴史を辿る

世界の映像ジャンルを席巻するアニメーション。実写映像に頼らず静止画を重ねて画面を動かす独自の表現として映画史でも早い段階に生まれ、各国で個性的な表現が生み出されてきた。中でも日本は、最もクオリティの高い作品を創り出してきた国の1つだ。

本展では、1930年代の初期作品から現代の新作までの世界のアニメーション映画の系譜を、所蔵する豊富なポスターコレクションなどの資料から網羅的に辿る。ハリウッドのカートゥーン映画やヨーロッパ各国の名作、そして日本が誇る作品にも重点を置き、アニメ映画が形作った大いなる潮流を振り返る。視覚面のみならず聴覚面からもアニメ映画を追体験できる音楽展示も。

ポスターでみる映画史 Part 5 アニメーション映画の世界
会期:4月8日(火)〜7月27日(日)
場所:国立映画アーカイブ 7F展示室(東京都中央区京橋3-7-6)
時間:11:00〜18:30(入室は18:00まで)
休館日:月曜、7月8日(火)〜13日(日)


2. 白木麻子「Water Mirror」(Gallery 38)

展示風景。Photography: Osamu Sakamoto
Photography: Osamu Sakamoto
Photography: Osamu Sakamoto
Photography: Osamu Sakamoto

他者の世界を想像する

1979年東京生まれ、現在はベルリンと東京を拠点に活動する白木麻子の個展。木を素材に用いた彫刻や、 自然物などを別の知覚世界にいる他者として取り入れたインスタレーションを制作し、静謐でありつつも強いメッセージ性を持つ作品は国内外で高く評価されてきた。白木はある時「枝」を巡って鳥と自身との接点を持ったことやコロナ禍を経て他者の世界を想像することの大切さを強く感じ、作品がその手段となっているという。

本展では、新作《Rooted in time, memories in bloom》を含む8点が展示される。その中のひとつ 《Evergreen》は、「他者の視点」への関心と気づきを得た白木の新たな試みを表現する作品と言える。「『記憶』を呼び覚まし (recall)、新しい意味を『再生』(re-generate)していく作品」と作家が語る本作は、韓国と日本という2国間の歴史的関係、そして韓国人の夫をもつ作家自身の家族の記憶という文化人類学的アプローチを用いながら、「蒸留」とい うテーマを軸に、写真作品、映像作品、21グラムの精油を注いだフラスコ、チェーンなどを用いて構成されている。

白木麻子「Water Mirror」
会期:6月13日(金)〜7月27日(日)
場所:Gallery 38(東京都渋谷区神宮前2-30-28)
時間:12:00〜19:00
休館日:月火祝


3. 千葉正也個展「絵画とiPS心筋細胞シート」(ShugoArts)

展示風景。Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto
千葉正也, 絵画とiPS心筋細胞シート, 2025, oil on canvas, panel, 35.3x43cm Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto
展示風景。Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts, Photo by Shigeo Muto

「絵画と野菜」シリーズなど新作29点を発表

1980年生まれの千葉正也は、2020年の東京オペラシティアートギャラリーでの個展ではペットの亀の視点で展示を展開し、2023年のShugoArts「横の展覧会」では、会場自体を90度回転させたかのような視覚的にも身体的にも違和感を与える展示を繰り広げるなど、鑑賞者の絵画体験を刷新する試みを続けてきた。また千葉は、絵画という伝統的な形式を起点に、絵画が帯びる「精神性」が空間に拡張し、鑑賞者へ作用する可能性を一貫して追求している。

本展では、新作29点が発表される。中でも「野菜」と「絵画」を並置する「絵画と野菜」シリーズは2021年にウィーンのギマレスで、馬小屋を改装した会場で開催予定だった展覧会に向けた構想が出発点だ。馬の餌である野菜と絵画を同じ空間に配置するというプランをアトリエで試みた際、千葉は、恣意的に結びつけられた両者のあいだに「野菜が絵画を助け、補っているような独特の関係性」があることに気がついたという。

千葉正也個展「絵画とiPS心筋細胞シート」
会期:6月28日(土)〜8月2日(土)
場所:ShugoArts(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00〜18:00
休館日:日月祝


4. 非常の常(国立国際美術館)

キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》2022年 シングルチャンネル・ヴィデオ(フルHD、カラー、サウンド) 国立国際美術館蔵 ©Ayoung Kim Courtesy the artist
米田知子《絡まった有刺鉄線と花(非武装地帯近く・チョルウォン・韓国)Ⅰ》2015年 発色現像方式印画 作家蔵 Copyright the artist Courtesy of ShugoArts
シプリアン・ガイヤール《Artefacts》2011年 フィルム(HDから35ミリフィルムに変換)、サウンド、ループ 国立国際美術館蔵 ©Cyprien Gaillard Courtesy the artist and Sprüth Magers
潘逸舟《わたしは家を運び、家はわたしを移す》2019年 ダブルチャンネル・ヴィデオ(モノクロ、サウンド) 国立国際美術館蔵 ©Ishu Han

常態化した非常事態をどう生きるか

いま、世界中で理不尽な攻撃や突然のクーデター、地震、洪水、山火事などの自然災害によって、多くの人々が住む場所を失い、強制的な移住を余儀なくされている。また、未知のウイルスが突如発生して生命を脅かし、引き起こされた政治的混乱や人間関係の分断は、今なお日々の暮らしに影を落としている。一方で、生成AIなど人工知能を含むテクノロジーが飛躍的に発達し、普段目にするイメージや情報の真正性の判断は、時に極めて困難になっている。

私たちは、そんな常態化した非常事態「非常の常」をどう生きるか。本展は、8人の作家の表現を通じて時代を見つめ、明日への希望を探る。出品予定作家はシプリアン・ガイヤール、潘逸舟、クゥワイ・サムナン、キム・アヨン、リー・キット、高橋喜代史、米田知子、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)。

非常の常
会期:6月28日(土)〜10月5日(日)
場所:国立国際美術館 B3階展示室(大阪府大阪市中央区中之島4-2-55)
時間:10:00〜17:00(金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日を除く)7月22日、8月12日、9月16日


5. 横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)(横浜美術館)

ピタゴラ装置(NHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供:横浜美術館
イデアの工場(DNP大日本印刷)
[左]だんご3兄弟(NHK「おかあさんといっしょ」 より)[上]フレーミー[下]ぼてじん(上下ともにNHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供:横浜美術館

「ピタゴラスイッチ」の生みの親、佐藤雅彦の「作り方」と「分かり方」

佐藤雅彦は表現者/教育者として「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」「だんご3兄弟」など、人々の記憶に残るテレビ番組やCM、キャラクターや映像作品、メディアアートなどを次々に生み出してきた。彼が世に送り出してきた多彩なコンテンツを一堂に紹介し、40年にわたる創作活動を紹介する世界初の大規模回顧展だ。

本展では、佐藤の「作り方」に焦点を当てる。「作り方が新しければ、自ずとできたものは新しい」と語る佐藤の創作の根幹には、「作り方」「分かり方」についての独自の理論やアイデアが蓄積されている。多様な作品とその創作プロセスを通じて、佐藤の世界の観察の仕方、ものごとの解釈の仕方、考えを整理する方法など、展示を通して佐藤流のメソッドを紹介し、観客に自分だけの考え方を生み出すよう促す。

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)
会期:6月28日(土)〜11月3日(月祝)
場所:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:木曜

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