中国・明代の壺が19億円で落札! オークション史上初出品、今年の中国美術最高落札額に
ロンドンのサザビーズで行われた中国美術のオークションで、中国・明代(16世紀)の非常に希少な魚藻文壺一対が、激しい競り合いの末、最高予想落札額の10倍近い960万ポンド(約19億円)で落札された。
11月6日、ロンドンのサザビーズで中国・明代(16世紀)の非常に希少な魚藻文壺一対がオークションに出品された。事前の最高予想落札額は100万ポンド(約2億円)だったが、激しい入札合戦の末、それを遥かに上回る960万ポンド(約19億円)で決着している。
20分にわたり競り合いを繰り広げたのは10人のコレクター。そのほとんどが電話による入札者で、最終的にはアジアの個人コレクターが落札している。今回のように蓋の付いた完全な形の魚藻文壺一対がオークションに出品されるのは史上初のことで、今年世界中のオークションで落札された中国美術品の最高額を記録した。
サザビーズによると、この磁器壺は約100年間、ドイツである一家のコレクションに保管されていた。一対が揃い、蓋が失われていない完全な形で残っているのは、これまでパリのギメ美術館に所蔵されているものしか知られていない。単体の魚藻文壺でも蓋付きのものは3つのみで、いずれも個人蔵になっている。
サザビーズのアジア美術、ヨーロッパ、アメリカ地区チェアマン、ヘンリー・ハワード=スニードは、高額落札の興奮をこう語った。
「出品カタログをリリースすると即、コレクターから熱心な問い合わせがありました。100年もの間、人目に触れることのなかった完全な形の魚藻文壺が再び現れたのですから、その希少性を考えれば収集家にとって見逃すことのできない機会です。コレクターの熱気は、今日のオークション会場で最高潮に達しました。オークションを主宰し、世界中からの入札に応じることができたのは、私にとって大きな喜びです」
サザビーズの声明によると、この壺が無傷で残っていたのは「奇跡としか言いようがない」という。
「第2次世界大戦中、ドイツ・ヴィースバーデンの邸宅が被害に遭う前に、一家の美術品コレクションは壺とともに安全な場所に移されました。1926年に出版されたドイツの美術・インテリア雑誌に掲載された写真には、『婦人室』に置かれた魚藻文壺一対が写っています。戦後、1950年代初めに再建された邸宅に関する記事では、居間に飾られていました」
サザビーズはまた、明の嘉靖年間(1522〜66年)に作られた魚藻文壺の素晴らしさは、「官窯の技術が新たな高みに達し、磁器生産の可能性が大きく飛躍した」ことからくるものと説明している。
なお、今回の中国美術オークションの落札総額は1960万ドル(約30億円)と、予想レンジ上限の930万ドル(約14億円)の倍以上となり、55%以上のロットで最高予想落札額を上回った。(翻訳:石井佳子)
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