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タイタニック生存者を救助した英雄の金時計が3億円で落札。3人の未亡人からの贈り物

タイタニック号沈没事故の現場に駆け付け、乗客乗員710人を救助した蒸気船RMSカルパチア号の船長に贈られた金時計が、11月16日にイギリスオークションハウスに出品され、156万ポンド(約3億円)で落札された。これはタイタニック関連の品としては最高額となる。

ヘンリー・アルドリッジ・アンド・サンに出品されたロストロン船長の懐中時計。Photo: Courtesy of Henry Aldridge & Son Ltd.

タイタニック号沈没事故の現場に駆け付け、いち早く生存者710人を捜索・救助した蒸気船RMSカルパチア号の船長に贈られた金時計が、11月16日にイギリスオークションハウスに出品されたとアートネットが伝えた。

沈没事故は1912年4月14日の夜から4月15日の朝にかけて大西洋上で起こった。蒸気船RMSカルパチア号はニューヨークからクロアチアのリエカ港へ向かう途上で、タイタニック号からの「至急来てください。氷山に衝突しました」という遭難信号を受信。船長のアーサー・ロストロンは沈没しつつあるタイタニック号に全速力で向かうよう命じた。だが周囲はいくつもの氷山が立ちはだかっており命の危険を伴ったが、最大速度で加速し続け3時間半後に現場に到着した。

沈没事故により1514人が犠牲となったものの、ロストロン船長の勇気ある行動により20隻の救命ボートに乗った乗客の捜索と救助がいち早く行われた。彼はアメリカとイギリスのメディアで英雄として称えられた。

それから1年後、沈没事故で夫を失いながらも救命ボートに乗って生き延びた3人の富裕層の未亡人たちは、ロストロンに18金のティファニー製懐中時計を贈った。時計裏面には船長のイニシャル「A.H.R.」、内部には「1912年4月15日、タイタニック号の生存者3名より、ロストロン船長へ心からの感謝と敬意を込めて。ジョン・B・セイヤー夫人、ジョン・ジェイコブ・アスター夫人、ジョージ・D・ワイディーナー夫人」と刻まれていた。

ヘンリー・アルドリッジ・アンド・サンに出品されたロストロン船長の懐中時計。Photo: Courtesy of Henry Aldridge & Son Ltd.

懐中時計は、約70年間ロストロン家に保管されていたが10年前に売却され、今回さらにイギリスのオークションハウス、ヘンリー・アルドリッジ・アンド・サンに出品された。同社は、タイタニックと同号を所有していたイギリスの海運会社、ホワイト・スター・ラインに関連する品を専門に取り扱っている。オークションは11月16日に開催され、予想落札価格が8万~12万ポンド(約1580万~2300万円)のところ、156万ポンド(約3億円)で落札された。

今年初めに同社はタイタニック号で最も裕福な乗客だったジョン・ジェイコブ・アスターが身につけていた金の懐中時計のオークションを行い、アメリカのコレクターが150万ドル(現在の為替で約2億3000万円)で落札。タイタニックに関する品として最高額を記録したが、今回それが塗り替えられた形となる。

この立て続けの高額落札について、同社のアンドリュー・アルドリッジは声明で「タイタニックに関連する品の供給が減少し希少性が増す中で、需要が増加し続けていることを示しています」と説明する。

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