タイタニック号で一番の富豪の懐中時計が2億3000万円で落札! 史上最高額を塗り替える
タイタニック号の乗客で最も裕福な人物だったジョン・ジェイコブ・アスター4世の遺体とともに回収された金の懐中時計が、4月27日にイギリスで行われたオークションで117万5000ポンド(約2億3000万円)で落札。タイタニックにまつわる品の史上最高落札額を樹立した。
オークションはイギリス南西部のディヴァイザズにあるヘンリー・オルドリッジ・アンド・サンが開催したもので、アスター4世の懐中時計はアメリカの個人コレクターに売却された。
毛皮貿易で財を成したアスター家の一族であるアスター4世は、1912年にタイタニック号が沈没したとき47歳だった。生存者の証言によると、彼は船がただちに危険にさらされるとは考えていなかったという。最後に目撃されたのは、当時身ごもっていた妻のマデレインを救命艇4号に乗せた後、デッキでタバコを吸いながら他の乗客と話しているところだった。
遺体は事故から7日後の4月22日に発見され、イニシャルが刻印された14金のウォルサム懐中時計も回収された。一方、救命ボートに乗り移ったマデレインは事故を生き延びている。時計はその後、アスター4世の息子ヴィンセントから、父の秘書だったウィリアム・ドビンの息子へと受け継がれた。
タイタニック号で最も裕福な乗客とされるアスター4世は、当時世界でトップクラスの富豪でもあった。その純資産は約8700万ドル、現在の数十億ドル(数千億円)に相当する。
今回記録が破られるまで、タイタニック号関連品の最高額は、沈没時に乗客を落ち着かせようと演奏されていたバイオリンの90万ポンド(2013年当時の換算レートで約1億4000万円)だった。これもヘンリー・オルドリッジ・アンド・サンで競売されたもの。そのバイオリンを入れていたケースが懐中時計と同じオークションに出品され、29万ポンド(約5700万円)で落札されている。
オークション会社幹部のアンドリュー・オルドリッジは、イギリスPA通信の取材にこう語った。
「タイタニック号ゆかりの品の人気は、物品そのものの重要性や希少性だけでなく、タイタニックの物語への関心が消えていないことを示しています。事故から112年経った今も、船そのものや乗客、乗組員に関する話題には事欠きません。
タイタニック号の悲劇に関する事実だけを見れば、巨大な豪華客船が氷山に衝突して多数の犠牲者を出したというものです。しかし、それ以上に重要なのは、2200人を超える乗客乗員それぞれに物語があることでしょう。老若男女一人一人の物語を、今その思い出の品が語っているのです」(翻訳:石井佳子)
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