アメリカの鑑定番組で本物認定! 代々受け継がれたきた水彩画が1800万円で落札
ウィンスロー・ホーマーの水彩画がアメリカのお宝鑑定番組「Antiques Roadshow」で鑑定された結果、本物であることが判明したのちに、クリスティーズのオークションに出品された。代々受け継がれてきた作品には約1770万円で買い手が付き、作家の公式目録にも追加された。
アメリカのお宝鑑定番組「Antiques Roadshow」で鑑定されたウィンスロー・ホーマーの絵画2点が、1月23日に行われたクリスティーズの19世紀アメリカ美術と西洋絵画のイブニング・セールで競売にかけられた。
今回オークションに出品されたのは、《Boy and Girl at a Well》(1879年)と《Boy and Girl on a Swing》(1879年)。前者は8〜12万ドル(約1250〜1800万円)の予想落札価格に対して11万3400ドル(約1770万円)で、後者は3〜5万ドル(約470〜780万ドル)の予想落札価格を上回る7万5600ドル(約1180万円)で買い手が付いた。 また、これらの作品は、専門家のアビゲイル・ブース・ゲルツによる審査を経たのちに、アーティストの公式目録にも追加されている。
クリスティーズのバイス・プレジデント兼アメリカ美術のシニアスペシャリストを務めるペイジ・ケステンマンは今回のオークションを、「これまで世に出ていなかった作品が出品されたのはとてもワクワクする出来事でした」と振り返る。また、アートアドバイザー兼ディーラーのベティ・クルリックはUS版ARTnewsに対して、「元の所有者たちは、この作品の本当の価値を理解していなかったようです」と語った。
番組内でホーマーの作品を鑑定したクルリックによれば、所有者は絵画に対して強い愛着を示しており、オフィスに飾るためのコピーを作成し、オリジナルの絵画は厳重に保管していたという。その後、保管されていた作品がホーマーの作品であることが12年前に判明して以来、アーキビストである所有者は鑑定番組に継続的に応募し続けた。そしてついに、アーカンソー州で撮影されたエピソードに鑑定対象として選ばれ、クルリックによって《Boy and Girl at the Well》と《Boy and Girl on a Swing》が作品目録に収録されていない本物であると結論づけられたのだ。
いずれの作品も、1879年にイリノイ州シカゴで行われたオークションで入手された可能性が高く、オーセリア・ハリエット・ベントレー=バーティスがに購入したのちに、5世代にわたって受け継がれ、クリスティーズに出品されるまではアーキビストが所有していた。
番組で鑑定されるためには、作品の画像を送り鑑定券を受け取る必要があるという。だが、複製や油石版画の技術で複製された油絵ではないと判断するには、現物を見なければならないとクルリックは話す。額縁に入った現物を目の当たりにした彼女は「衝撃を受けた」と当時を振り返り、審査を専門家に依頼したという。クルリックはこう語る。
「アーキビストを引退した所有者は、仕事で作品を見る機会が減っていたようです。でも、幸運なことに、私たちはブース・ゲルツにホーマーの作品を審査してもらったのちに、これらの絵画を作品目録に追加することができました。番組で鑑定された二つの作品は、ホーマーがシカゴのギャラリーで作品を展示し、ヨーロッパへの旅費を集めようとしていた年に、所有者の曾曾祖母がシカゴで購入したといいます。こうした情報が揃った結果、鑑定依頼を受けた作品が本物であるという判断に至りました」
ホーマーの作品目録には、少年と少女を題材に1870年代後半に描かれたシリーズ作品がいくつか含まれている。《Boy and Girl at a Well》と《Boy and Girl on a Swing》は、同時期に作られた南北戦争後の田舎の純朴な生活を称える作品と通ずるものがあると、クリスティーズのケステンマンは語る。
「ウィンスロー・ホーマーは19世紀を代表する芸術家の一人として、また美術史上でも確固たる地位を築いてきました。特に水彩画家としての彼の技術は広く知られ、また、公的機関や重要な個人コレクションに長年収蔵されてきた歴史もあります。つまり、彼はアメリカのアート市場を象徴する人物であると同時に、学芸員の間でも、美術史上における重要な画家の作品として現在も堅実な需要があるのです」
予想落札価格を算出するにあたってクリスティーズは、2枚の絵画が100年以上受け継がれてきたプライベート・コレクションにあったこと、作品の状態、修復作業の質、そして画家への評価を考慮したという。しかし、光に露出されたことで色あせてしまった《Boy and Girl on a Swing》には、低い評価額が付けられた。
ホーマーの水彩画2点に加え、19世紀アメリカおよびウェスタン・アートのオークションでは、トーマス・コール、ホーマー・ドッジ・マーティン、アーノルド・フリードバーグの作品が新たな記録を樹立した。100万ドル以上の落札価格を記録した上位7作品のうち、コールの風景画《Mount Chocorua, New Hampshire》は、80〜120万ドル(約1億2500万〜1億8740万円)の予想落札価格に対して160万ドル(約2億5000万円)で落札された。また、マーティン・ジョンソン・ヘッドの《Magnolias on a Shiny Table》は、70万〜100万ドル(約1億1000万〜1億5600万円)の予想落札価格を大きく上回り、150万ドル(約2億3400万円)で買い手が付いている。
クリスティーズは、19世紀アメリカおよびウェスタン・アートの総落札額は、手数料込みで1920万ドル(約30億円)だったと発表している。(翻訳:編集部)
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