失われた古代都市イメットを発見。2300年前の多層階住居跡や儀式用遺構などが出土

エジプトのナイルデルタ東部で、約2300年前にさかのぼる古代都市イメットの遺跡が発見された。多層階の住居跡や倉庫など当時の暮らしをうかがわせる遺構や、女神ワジェト崇拝に関連する儀式用の道などが発掘されている。

エジプトのテル・エル=ファラインで発掘された日干しレンガの基盤や壁。Photo: Hamada Hussein

エジプト観光・考古省の発表によると、ナイルデルタで栄えた古代エジプトの都市イメットの遺跡がシャルキーヤ県で発見された。多層階の住居跡、倉庫や動物の囲いなどがほぼ無傷で出土するのは貴重で、そこからは紀元前4世紀初頭から半ばの人々の生活を垣間見ることができる。

イメットはナイルデルタにおける交易の十字路にあり、かつては下エジプト第19州の主要な都市だった。その中心にあった下エジプトの守護女神ワジェトを祭る神殿は、周辺地域から広く巡礼者や旅行者を集めていたと見られる。

発掘調査は、建物が密集していることが衛星写真から予想されていた遺跡の東端を中心に行われ、末期王朝後期の都市計画に典型的な塔状の住居を示唆する分厚い基礎壁が見つかっている。日干しレンガがほとんど残っていないこの地域でのこうした発見は注目に値する。

また、ホルス神がワニを踏みつけている場面が描かれた石碑の近くからは、緑色の陶製の小立像(第26王朝時代の副葬品「ウシャブティ」)の破片が見つかった。ホルスの隣には魔除けの神ベスが立っている。

さらには、石灰岩の基壇や2本の太い日干しレンガの柱跡、2つの拝殿を結ぶ儀式用の道の跡も発見された。専門家によると、この道はプトレマイオス朝中期のある時期に使われなくなったという。

神殿は紀元前13世紀のラムセス2世によって再建され、後に紀元前6世紀のアマシス2世が修復を行ったとされる。このように、長きにわたり神殿が維持されたことで、周囲に住居や都市のインフラが集積していったと考えられる。

約2300年もの間、土塁の下に埋もれていたこの遺跡の発掘調査では、イギリス・マンチェスター大学の考古学研究チームが主導的な役割を果たしている。(翻訳:石井佳子)

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