中国の美術館で、子どもが5000万円相当の金の冠を破損。弁護士らは展示体制の不備を指摘

中国北京のX美術館で展示されていた、24万765ポンド(約5000万円)相当の純金の冠が破損する事故が起きた。展示台に近づいた子どもが冠を倒したとみられている。

事故により破損した純金の冠。Photo: Jam Press

中国北京のX美術館で展示されていた純金の冠が倒れて破損する事故が起きた。英紙メトロなどが報じている。

破損した冠は、中国のアーティスト、ジャン・ユードン(Zhang Yudong)が、妻でインフルエンサーのジャン・カイイー(Zhang Kaiyi)が結婚式で身に着けるために制作した作品。重さ約2キロの純金で作られており、その価値は24万765ポンド(約5000万円)にのぼるとされている。

この冠は、北京のX美術館で開催されていた「愛」をテーマにした無料の展覧会で展示されていた。防犯カメラの映像によると、母子と思われる観客が展示に近づいた際、子どもが展示台にしがみつき、防護ケースごと冠を床に落下させてしまったという。

事故の瞬間を捉えた映像はSNS上で瞬く間に拡散され、大きな反響を呼んだ。当局はこの事故により、冠に約4万2000ポンド(約870万円)相当の損害が発生したと発表している。

冠には保険がかけられていたものの、損害賠償の責任を子どもの家族が負うべきかどうかをめぐって議論が巻き起こっている。中国の法律専門家の間でも意見は分かれており、事故の経緯や展示環境、美術館側の管理責任が重要な判断材料になるとみられている。

X美術館の広報担当者は、展示ケースが固定されていなかったことを認めている。これを受けて弁護士らは、作品の素材や市場価値を考慮すれば、より高い保護性能を備えた展示方法が求められるべきだったと指摘する。

一方でジャン・カイイーは事故後、SNSに声明を投稿し、「この冠の価値は、金の重量だけで測れるものではない」と強調。「この作品は私にとって極めて特別なものであり、非常に高い価値を持っています」と心情をつづった。

現在も当局による調査は続いている。今回の事故は、高額作品の展示における安全対策や、美術館の責任のあり方を改めて問い直す事例となりそうだ。

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