動物愛護団体が救助か。アート作品として展示された3匹の子豚が盗まれる
デンマーク・コペンハーゲンで行われた本物の子豚を使ったアート展示で、3月1日、生体が盗まれる事件が起こった。この作品は、子豚をケージに閉じ込めて飢え死にさせることで、同国における養豚業のずさんな管理体制を問うという内容だった。

デンマーク在住のチリ人アーティスト、マルコ・エバリスティは、2月28日からコペンハーゲンのかつて肉屋の倉庫だった場所で展覧会を開催。その中の《And Now You Care?(そして今、あなたは気にかけるのか?)》という作品が物議を醸した。
ニューヨーク・ポストによるとこの作品は、ショッピングカートでできたケージに3匹の子豚を閉じ込め、水のみを与えて餓死するまで放置するというもので、デンマークの養豚業に関連する倫理的問題に光を当てることを意図している。同国は養豚が盛んな国として知られているが、家畜に対するずさんな管理や薬漬けの飼育で批判を受けている。作品の傍らには、デンマーク国旗の上に屠殺された血まみれの子豚を置いた絵画も展示されていた。
同作が発表されるやいなや、デンマークの多くの人々は憤った。地元紙ポリティケンはこの展示を「古風なアバンギャルド」と呼び、同作の情報は地元の動物愛護団体の耳にも届いた。世界動物保護協会デンマーク支部のディレクター、ギッテ・ブッフハーベは声明を発表し、「私たちはマルコ・エバリスティの展示の意図を理解していますが、別の動物虐待行為を行うことで、ある動物虐待行為に抗議するのは受け入れられません。私たちは長い間デンマークの養豚業の状況を批判してきましたし、これからも続けていきますが、これは変化を生み出す方法ではありません」と抗議した。
そして3月1日、子豚たちは姿を消した。エバリスティがニューヨーク・タイムズに語ったところによると、朝、スタッフが展示スペースを掃除していた時に動物愛護団体のメンバーが作品を見に来たという。その後、エバリスティは子豚たちがいなくなって作品が「退屈」になったという理由で3月4日に展示を閉鎖した。
閉鎖前、エバリスティは地元の通信社リッツァウの取材に対してこう主張した。
「作品の豚たちは、もともと体が弱すぎるためどうせ死ぬはずでした。そしてここは従来のデンマークの豚舎よりも広く、多くの餌と水が与えられていました。デンマーク国内では、劣悪な飼育環境のせいで毎日2万頭以上の豚が死んでいるのです」
子豚がいなくなった今も、デンマークでは論争が完全に収まらない。右派のデンマーク国民党のピア・キアスゴー議員は、フェイスブックの投稿でエバリスティを「変態のアーティスト」と呼び、現時点でその投稿には2万件以上の「いいね」がついている。エバリスティはインスタグラムでこれは名誉毀損だと主張し、彼女に対して法的措置を取ると告げた。
現在62歳のエバリスティは過去、ディナーパーティーのメイン料理として自身の脂肪(脂肪吸引で採取)で作ったミートボールパスタを提供したり、ユダヤ人だった祖母の金歯を一部使った黄金のアウシュヴィッツ収容所の門模型を制作したりして物議を醸している。そして彼は2000年にも作品に生きた動物を使用している。金魚を入れた10台のミキサーを並べ、観客にそのスイッチを押すよう促す《Helena》を発表し、展示したデンマークのトラフォルト美術館館長が動物虐待の罪で起訴されたが、後に無罪となっている。(翻訳:編集部)
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