未知なる人類祖先の可能性? 霊長類と人間の特徴を併せ持つヒト科化石「リトルフット」に新説が浮上

1990年代に発見された人類祖先の化石「リトルフット」が、既知の種のいずれにも該当せず、未知の種である可能性が浮上した。リトルフットの頭蓋骨を分析した結果、進化の過程で変化しにくいとされる後頭部に明らかな違いがあったという。

デジタル複製された「リトルフット」の頭蓋骨。Photo: La Trobe University
デジタル複製された「リトルフット」の頭蓋骨。Photo: La Trobe University

「リトルフット」の愛称で呼ばれる、ほぼ完全な状態で発掘された先史時代のヒト科の化石が、これまで知られていなかった人類祖先種の可能性があると、オーストラリアの研究チームが指摘した。

この化石は、ヨハネスブルグ・ウィットウォーターズランド大学の古人類学者ローランド・J・クラークが1990年代に発見したもので、当初はアウストラロピテクス・アフリカヌス、もしくはその近縁種に属すると考えられていた。その後、クラークは骨格の違いに注目し、アウストラロピテクス・プロメテウスと呼ばれる別種に分類される可能性を示していた。

ところが、学術誌『American Journal of Biological Anthropology』に掲載された論文では、リトルフットの特徴はいずれの既知の種とも一致せず、新種に属する可能性があると主張された。メルボルンのラ・トローブ大学の非常勤研究員で研究を率いたジェシー・マーティンは、ガーディアン紙の取材に対し、「リトルフットは未知の人類祖先種である可能性が高い」と述べ、クラークの見解に異議を唱えている

「この化石はアウストラロピテクス・プロメテウスでもなければ、ステルクフォンテインで見つかったアフリカヌスとも一致しないように思えます。クラークと私が意見を異にするのは、リトルフットが間違いなくプロメテウスではないという点です」

マーティンによれば、リトルフットとアウストラロピテクス・アフリカヌスとの最も顕著な違いは、頭蓋骨の後頭部にあるという。後頭部は進化の過程で比較的変化しにくい部位とされており、そこに明確な形態差がある場合、異なる種である可能性が高いと指摘している。

高齢の女性と考えられているリトルフットは、人間のように二足歩行していた一方で、霊長類のように木の上で暮らしていたとみられる。腕は現代人よりも長いが、手の形は霊長類より人間に近いなど、両者の特徴を併せ持っている。ただし、この骨格の正確な年代特定は難航しており、220万〜367万年前に存在していたと幅をもって推定されている。発掘からおよそ30年が経ち、新たな可能性が示唆されているものの、マーティン率いる研究チームはリトルフットを新種として命名していない。その理由についてマーティンはこう語る。

「長い年月をかけてリトルフットをほぼ完全な状態で発掘・分析してきた研究チームが新種を命名する方が適切ではないでしょうか。私たちの提案を、善意の助言として受け止めていただければと思います」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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