古代エジプト写本に残された「人類滅亡の予言」──5000年前の警告、その謎に研究者が挑む

エジプトにあるネクロポリス、サッカラで考古学者たちが発掘調査を行ったところ、5000年前の写本を発見した。写本を解読すると、人類に共通する「恐ろしいメッセージ」が現れたという。

エジプトにあるネクロポリス、サッカラ。Photo: Wikimedia Commons

2024年にエジプトのサッカラで行われた発掘調査で、墓の地下深くに密閉された石棺から5000年前の写本が見つかったとエルサレムポストが報じた。

古代エジプト文明の初期王朝時代(紀元前3150年頃〜紀元前2686年頃)に制作されたと考えられる写本は、神官文字と初期のヒエログリフで書かれていたことは確認できたが、劣化が進んでおり文章を読み解くのは困難だった。そこで研究者たちは、AIによる翻訳支援システムと高度な画像読み取り技術を導入。すると、写本には「恐ろしいメッセージ」が記されていたことが分かった。

そこには過去の社会を襲った破滅的な行為が列記されており、人類が同じ過ちを繰り返していることが示唆されていた。その理由として、人類が見えない宇宙の力によって導かれる「避けられない運命の循環」に捕らわれていることが記されており、これらの循環を断たなければ人類は悲惨な結末に向かうと予言されていた。

また、このメッセージの核心は、1人の人間の行動の全てが全人類の運命を左右するという相互関連性であるとした上で、こう宣言している。

「先祖の知恵に耳を傾けなければ、人類は同じ過ちを繰り返し、その結果は破滅的なものとなるだろう」

また、死後に関する記述も見られた。特に注目すべきは、不道徳な個人は死後に安息ではなく陰鬱な運命に直面する可能性があると警告していることだ。これにより初期の古代エジプトの人々が現世と来世が関連するものであると信じていたことが分かった。

これらの結果から、一部の研究者は、写本が紀元前1~ 2世紀頃に成立されたとされるエチオピア正教会における旧約聖書の1つ「エノク書」と繋がっていると考えている。エノク書には人間の起源や超自然の存在、宇宙の構造などが描写されており、写本の内容と似通った部分がある。最古の文明の哲学的・宗教的思想についての洞察が得られる可能性があるということから、研究者の関心が集まっている。

だが写本は解読途中だ。研究者たちは、古代エジプト王朝の初期に遡る文書が見つかるのは非常に稀であり、写本から得られたデータが、古代エジプトだけでなく全人類史の理解を根本的に変える可能性があると断言している。彼らは、いつかメッセージの全容を明らかにすることを期待しながら、写本と格闘し続けている。

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