ルーブル美術館の強盗直後に「鑑定料500倍」の怪しげな依頼。ベテラン美術品鑑定士が証言

10月19日にパリルーブル美術館に窃盗団が押し入り、フランス王室の宝飾品8点が盗み出された。イギリスのベテラン美術品鑑定士カーティス・ダウリングは、その数時間後、怪しげな鑑定依頼が2件来たことを明かした。

美術品鑑定士のカーティス・ダウリング。Photo: Getty Images

10月19日にパリルーブル美術館に窃盗団が押し入り、フランス王室の宝飾品8点が盗み出された。10月21日、パリ検察庁のローレ・ベクオー検事は、盗まれた宝石類の金銭的価値は推定8800万ユーロ(約155億円)相当と発表したが、その中には歴史的価値は含まれていない。

そんな中、イギリスの美術品鑑定士カーティス・ダウリングは、ルーブルに強盗が入った数時間後、ロシアからという鑑定の電話依頼を2度受けたとLinkedInに公表した。投稿では、その時の状況を次のように説明している。

「(依頼主は)重要なフランスの宝飾品を鑑定できるか? 緊急だ。通常の手数料はいくらかと聞きました。私が電話の男に伝えると、その500倍の額を現金で支払うと彼は言うのです。私は怪しいと感じました」

カーティス・ダウリングは2013年から続くCNBCの人気番組「トレジャー・ディテクティブズ」のメインキャストでもあり、鑑定歴37年のベテランだ。投稿では、こう続けている。

「男は中東系の訛りがありました。ルーブル美術館の貴重な宝石を急いで転売しなければならない状況なのでしょう。価値の分からない人間に安く買い叩かれるのを避けるために、世界一の鑑定士である私に電話したわけです。私を買収しようとしたようですが、それは不可能です。もし宝石を買い取ったら、犯人を警察に突き出せないですから」

ダウリングはUS版ARTnewsの取材に対して、「2人の男が非常に似た状況を説明したため、ルーブル美術館から盗まれた宝石についての話をしていると察するのは、難しい話ではありませんでした」と話した。相手の素性を引き出すために、電話を長引かせようという誘惑はなかったのかと尋ねると、彼は「法律の正しい側にいて、組織犯罪グループを刺激しないのが最善だということを知っていますので」と答えた。彼はLinkedInにも、「私は丁寧に関与を辞退しました。なぜなら……私は金持ちになるためにこの仕事をしているわけではありませんし、第2に、もし関与すればサウジアラビアのどこかに埋められる可能性があるからです」と書いている。

また、US版ARTnewsに対し、ダウリングは美術品鑑定の正式な訓練や資格を持っておらず、鑑定技術は「非倫理的である」と認めた。そして、「この世では誰もが何かの才能を与えられています。神に感謝です。私の場合は偽物を見抜き、そしてそれを丹念に証明する力を持っているのです」と語った。(翻訳:編集部)

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