盗難被害のルーブル美術館、防犯カメラ足りず。報告書が警備の「時代遅れ・欠陥」を指摘

10月19日にフランス王室の宝飾品8点がわずか数分で盗み出されたルーブル美術館。20日に関係筋が入手した報告書では、その警備システムが「時代遅れ」で「欠陥あり」であることが指摘されていた。560億円近くの年間予算があるにもかかわらず、設備の更新を怠ってきた実態が明らかになっている。

窃盗事件翌日のルーブル美術館。同館から王室の貴重な宝飾品8点が盗まれたことから10月20日は臨時閉館していた。Photo: Anadolu via Getty Images
窃盗事件翌日のルーブル美術館。同館から王室の貴重な宝飾品8点が盗まれたことから10月20日は臨時閉館していた。Photo: Anadolu via Getty Images

10月19日にルーブル美術館の「ギャラリー・アポロン」で起きた窃盗事件を受け、ラジオ・フランスは、10月20日に浮上した会計検査院による報告書の中で(報告書全文は11月上旬に公開予定)、同館の警備システムが「時代遅れで欠陥がある」と指摘されていることを明らかにした

この報告書では、「警備システムの近代化が繰り返し延期されてきた」と指摘されている。カメラの多くは「展示室の改修時にのみ設置されてきた」といい、来館者の増加によって既存設備への負荷が高まり、老朽化が進行したとも記されている。

また、「ギャラリー・アポロン」と《モナ・リザ》があるドゥノン翼では展示室の3分の1に、また美術館最大の展示スペースであるリシュリュー翼では展示室の75%に、カメラが設置されていないという。美術館全体で見ると、2019年以降に追加されたカメラはわずか138台にすぎない。

報告書はさらに、年間3億2300万ユーロ(約567億円)の運営予算を有しながらも、警備強化に十分な資金を割いてこなかった点を批判し、「投じられた金額は必要とされる額に比べて少ない」と付け加えた。一方で、ルーブル美術館館長ローランス・デカールによれば、この監査は彼女が2021年9月に就任した直後に開始されたという。

この調査結果を受け、美術館運営への批判が再び強まっている。従業員は以前から、過密状態のなかで3万6000点に及ぶ展示作品を十分に保護できないと訴えており、6月には人員不足への不満からストライキも実施された。

ルーブル美術館とエマニュエル・マクロン大統領は、7〜8億ユーロ(約1230〜1406億円)を投じる同館の大規模改修計画を今年の初めに発表している。文化大臣を務めるラシダ・ダティは、今回の事件と調査結果を踏まえ、改修予算の一部を警備システムの強化にあてる方針を明らかにした。新たな防犯カメラの設置に加え、窃盗事件と警備体制の不備をめぐる政府調査も進められるという。

一方、文化省は窃盗事件当日の午後、ギャラリー・アポロンの警備システムには不備がなかったとする声明を発表。「警報は問題なく作動し、犯人が迅速かつ強引に侵入してきた際、展示室と隣接エリアにいた5人の美術館スタッフが警備対応にあたった」と説明している。

同日には、ルーブルの従業員を代表する労働組合、フランス民主労働総同盟(CFDT)も声明を発表しており、警備体制の独立監査や人員増強、調査結果の公開を求めた。(翻訳:編集部)

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