ありえない場所から古代エジプト新王国時代の集落跡を発見。「歴史が完全に書き替えられる」と専門家
フランスの考古学者たちがエジプトのアレクサンドリア近郊で、古代エジプトの新王国時代(紀元前1570年頃 - 紀元前1070年頃)に建設されたと推定される集落跡を発見。この地域に古代エジプト王朝時代の集落は無かったとされており、大発見にチームは沸いている。

フランス国立科学研究センターの研究者らは、エジプトのアレクサンドリア近郊にあるマリウト湖近くのコム・エル・ヌグスで、約3500年前の古代エジプト新王国時代の集落跡を発見したと学術誌「アンティクィティ」に発表した。
チームはもともと、プトレマイオス朝時代(紀元前332年-紀元前331年)にギリシャ人が居住していた都市の調査と発掘を行っていた。一般的にこの地域は、アレクサンドロス3世の治世からプトレマイオス朝が滅亡するまでのヘレニズム時代のみに人々が居住していたと考えられていた。
だが研究者たちは、その時代には見られない日干しレンガで造られた集落跡を発見。そこから「メリタトン」という印章が刻まれた壺が出てきた。メリタトンは、古代エジプト18王朝時代(紀元前1550年頃-紀元前1292年頃)のファラオであるアクエンアテンとその妻ネフェルティティの娘で、ツタンカーメンの姉妹にあたる女性の名だ。
壺の印章に加えて、考古学者たちは、紀元前1203年から紀元前1197年まで統治したセティ2世のカルトゥーシュ(古代エジプトの文字で王名を刻み、楕円で囲ったもの)が刻まれた石碑の断片や、紀元前1303年から紀元前1213年まで統治し、一般に聖書の出エジプト記に登場するファラオと考えられているラムセス2世に捧げられた神殿の石材なども発見。また、同遺跡からは排水システムや、明確に組織化された街路なども見つかっており、高度な都市計画と長期間の開発が行われていたことが伺える。この遺跡が形作られた時期は、古代エジプトが最も栄え、「黄金期」とも呼ばれた新王国時代(紀元前1570年頃 - 紀元前1070年頃)にあたる。
研究者たちはまた、この集落からエジプト末期王朝時代(紀元前664年-紀元前332年)とエジプト第三中間期(紀元前1070年-紀元前664年)の居住跡も発見した。
研究チームを率いたリヨン大学の考古学者シルヴァン・デニンは今回の発見について「ニュー・サイエンティスト」誌に、「この遺跡で新王国時代の遺構が発見されたことは大きな驚きでした。同時代におけるエジプト西部国境の歴史を完全に書き替えるものです」と語った。
しかし、広範囲の発掘調査を行ったにもかかわらず、古代の町の名前は見つかっていないなど、まだ謎の部分も多い。ケンブリッジ大学の考古学者レナン・レモスは、この遺跡の年代特定に関する確実性には慎重な姿勢を示している。彼は「ニュー・サイエンティスト」誌に、「継続的な発掘によって、この集落の創設とその居住段階についてより詳細な情報が提供されることを期待しています」とコメントした。(翻訳:編集部)
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