「謎の王トトメス2世のミイラはここにある」──発掘チームが考古学史を覆す仮説を発表

2月18日、ルクソール西部の王家の谷近くで古代エジプト第18王朝のファラオ、トトメス2世(紀元前1518-1504)の墓が見つかったと発表され、古代遺跡ファンを沸かせた。だがそれだけではなく、発掘チームはこの場所にトトメス2世のミイラが眠る墓室があると考えている。

ルクソール西部の王家の谷。周辺では現在も発掘作業が続けられている。Photo: Getty Images

エジプト最高考古学評議会とイギリスのニューキングダム研究財団による合同チームは、ルクソール西部の王家の谷近くで2022年に見つけた墓は、古代エジプト第18王朝のファラオ、トトメス2世のものだったと発表。1922年にイギリスの考古学者ハワード・カーターによってツタンカーメン王の墓が発見されて以来初となるファラオの墓の発見に人々は驚いた。

だが、今回の調査チームの陣頭指揮を執ったイギリスの考古学者ピアーズ・リザーランドは、この墓の付近にトトメス2世のミイラが眠っていると考えている。しかし、トトメス2世のミイラは、埋葬後すぐに起こった洪水で流され、19世紀に付近の遺跡デイル・エル・バハリ・カシェットで発見されたとされている。

トトメス2世は30歳頃に病気で早世したとされているが、彼についての遺物が無いため分かっていることはほとんどなく、在位期間も3年とも14年以上とも言われている。

現在カイロ博物館に所蔵されているトトメス2世のミイラは30歳頃に亡くなっており「Aa-en-re」と書かれたラベルが貼られていた。これについてリザーランドはアートニュースペーパーの取材に対し、「名前に『en』がつく王はトトメス2世だけであり、彼の摂政名は 『Aa-kheper-en-re』であったので、そう定義づけられたのです」と説明している。そして彼はこう続けた。

「これが、ミイラがトトメス2世であると特定する唯一の根拠です。 いくつかのミイラは誤ったラベルを貼られたことが知られているので、この証拠はかなり揺らいでいます。 何度も繰り返し言われてきたという事実だけが、この証拠に重みを与えているのです」

リザーランドはさらに、トトメス2世の埋葬に関連する遺品は博物館や個人のコレクションには1つもなく、唯一あるのは2022年に彼のチームによって発見されたものだけだと明かした。 そして彼は、 「彼のミイラが発見されたのであれば、なぜ他の多くの王と同じように、同時に彼の副葬品や埋葬用具の断片が発見されないのでしょうか?」と問いかけた。

それでは本物のトトメス2世のミイラはどこにあるのか。リザーランドは、「私たちが信じている、ある場所の上に23メートルの層が堆積しています。私たちは、その下にトトメス2世のミイラが収められた墓室が隠されていると信じています。他の確認できる証拠もあります」と話す。

トトメス2世の墓の考古学的調査は今後2年は続けられる。そのうちに再び世紀の発見のニュースがもたらされるかもしれない。(翻訳:編集部)

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