ヴェネチア・ビエンナーレの審査員会が総辞任。金獅子賞の授与は事実上見送りへ
2026年のヴェネチア・ビエンナーレで受賞者を選出する審査員会が、4月30日付で辞任したことを明らかにした。これを受け、金獅子賞の授賞式は会期最終日に延期され、従来の審査員会による選考は行われない見通しとなった。
2026年のヴェネチア・ビエンナーレで受賞者を選出する審査員会が、4月30日に辞任を明らかにした。発表はアートメディア「e-flux」のInstagramアカウントを通じて行われたが、辞任の理由は明記されていない。声明には次のように記されている。
「2026年4月30日をもって、私たち、第61回ヴェネチア・ビエンナーレ『In Minor Keys』の芸術監督コヨ・クオによって選出された国際審査員団は辞任します。この決断は、2026年4月22日に発表した意向表明に則ったものです」
声明には、ソランジュ・オリヴェイラ・ファルカス(Solange Oliveira Farkas)、ゾーイ・バット(Zoe Butt)、エルヴィラ・ディアンガニ・オセ(Elvira Dyangani Ose)、マルタ・クズマ(Marta Kuzma)、ジョヴァンナ・ザッペリ(Giovanna Zapperi)の5人全員が署名している。審査員会は4月22日、ビエンナーレ事務局から発表されたばかりだった。当時の発表によれば、2025年5月に芸術監督のクオが急逝したことを受け、ビエンナーレの4人の理事会メンバーが審査員を選出したと説明されている。
審査員会の総辞任は、5月5日から始まるプレビューに向けて世界中のアート関係者が現地に集まり始めるタイミングで発表された。今回の辞任が、ビエンナーレ側からの要請を受けたものかどうかは、現時点では明らかになっていない。
ビエンナーレ事務局がUS版ARTnewsに寄せた声明によれば、5月9日の一般公開に先立って予定されていた金獅子賞の授賞式は、会期最終日の11月22日に延期されるという。事務局はその理由として、審査員会の辞任と「国際社会が直面している異例の地政学的状況」を挙げている。
ただし、従来の審査員会による選考は行われないため、今年のビエンナーレでは事実上、金獅子賞の授与が見送られる見通しだ。これに伴い、審査員会が選出するアーティスト部門と国別参加部門の金獅子賞に代わって、一般来場者の投票による2つの「観客賞」が授与される予定だという。
審査員会総辞任に至る背景にあると考えられるのは、発表翌日の4月23日に同じくe-fluxを通じて発表された長文の声明だ。そこで彼らは、国際刑事裁判所(ICC)から人道に対する罪で告発された指導者を擁する国家のパビリオンを、審査対象から除外する意向を示していた。これは、出展をめぐってすでに激しい批判を浴びていたイスラエルとロシアの参加を念頭に置いたものと受け止められた。審査員会はこの方針の理由として、「アートと時代の差し迫った危機をつなぐ場として機能するビエンナーレの歴史的役割を全うする責任がある」と説明し、人権擁護への誓いを示すとともに、コヨ・クオが構想した芸術祭の意思を継承する判断でもあると述べていた。
この声明には、批判も集まった。イスラエル外務省はXへの投稿で、審査員会の判断を「アート界の汚染に加担する判断」と非難し、今回のビエンナーレについても「反イスラエルに洗脳された大げさなイベント」と批判した。また、イスラエル館の代表作家ベル=シミオン・ファイナル(Belu-Simion Fainaru)も声明を発表し、「審査員会の声明は、敵対的で品位を損なう環境を生み出している」と不満を示した。ロシア館については、一般公開を中止する見通しだ。
一方、ビエンナーレの主催者側は、審査員会の独立性を尊重する姿勢を示している。主催者側は、4月23日の声明について、審査員会が自らの意思で公開を選んだものだと説明したうえで、「ヴェネチア・ビエンナーレが保証する自由と自律性が自然な形で示された」と述べている。(翻訳:編集部)
from ARTnews