古代エジプトのミイラは「高級スパの香り」との調査報告。良い匂いには死者の弔いの意味も
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとスロベニアのリュブリャナ大学の研究チームは、カイロのエジプト博物館に保管されている5000年前のミイラから放たれる香りを調査。その結果、まるで「高級スパ」のようなものである事が判明した。
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ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とスロベニアのリュブリャナ大学による研究チームがカイロのエジプト博物館に展示・保管されている5000年前の古代エジプトのミイラから放たれる香りを調査した結果、「高級スパ」のような香りであったと発表した。調査結果は2月13日、Journal of American Chemical Society誌に掲載された。
AP通信によると、研究では、エジプト博物館に保管または展示されていた9体のミイラが収められた石棺から空気分子を採取し、化学分析と人間の嗅覚の両方を使って評価した。すると、松やジュニパーなど、ミイラの防腐処理に使用された樹脂に由来する香りに加え、「ウッディ」「スパイシー」「スイート」といった花束のような心地良い香りの要素が確認されたという。ミイラを作る際に使用された樹脂、油、蝋は、防腐という実用的な役割以外にも、スピリチュアルな目的も担っていた。古代エジプトでは、良い匂いは純粋さや神々を連想させ、悪臭は腐敗を意味する良くないものとされていたのだ。研究者たちは、博物館での保存と数千年に渡る空気への曝露により、香りが変化している可能性があることも指摘している。
同様の研究は2年前にも行われている。マックス・プランク研究所のバーバラ・フーバーは、高貴な女性のミイラ化した臓器が入っていた壺(カノプス壺)の残留物を分析し、防腐剤の成分、その起源、交易ルートについて明らかにする研究を行った。 その後、彼女は調香師と協力して、デンマークのモースガード博物館で開催された展覧会のために、防腐処理の香り「永遠の香り」の再現を行った。 今回の研究者たちもフーバーと同じように、彼らが発見した香りを人工的に再現した「スメルスケープ」を展覧会で観客に体験してもらい、古代の慣習を未来へ伝えたいと考えている。
現在、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」では、数体の猫や人間のミイラが来日中だ(4月6日まで)。ガラスのケースに覆われているが、ミイラが放つ香りに思いを馳せる良い機会だ。(翻訳:編集部)
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