150年ぶり快挙! 古代エジプト「カノプス勅令」の新たな石碑を完全な状態で発見

古代エジプト、プトレマイオス3世治世下の紀元前238年に発布された「カノプス勅令」の、これまで知られていなかった複製が完全な形で見つかった。発見されたのは古代都市イメットがあった場所で、新たな石碑の出土は実に150年ぶりだという。

エジプト北部シャルキーヤ県のテル・エル=ファライン遺跡で進められている発掘調査の様子。Photo DeAgostini/Getty Images

エジプト考古最高評議会の調査団が、シャルキーヤ県エル・フセイニヤのテル・エル=ファライン遺跡で、カノプス勅令の複製石碑を発見した。ここは古代エジプトのプトレマイオス朝時代に、ナイルデルタの中心都市として栄えたイメットのあった場所だ。

9月9日にエジプト観光・考古省が発表したところによると、砂岩でできた石碑は高さ127.5センチ、幅83センチで、厚さは48センチある。丸みを帯びた頂部の中心には翼のある太陽が配され、その下にはコブラをかたどった2匹のウラエウスが二重冠を戴いた姿で描かれている(二重冠は上エジプトを表す白い冠と下エジプトを象徴する赤の冠が組み合わされたもの)。2匹の間には「命を与える者」を意味する「Di Ankh」という銘文が記され、その下に30行の勅令がヒエログリフで刻まれている。

プトレマイオス朝時代における最重要勅令の1つとして知られるこの碑文は、アレクサンドリア近郊にあった古代都市カノプス(カノープス)における大祭司たちの集会の一環として発布された。プトレマイオス3世エウエルゲテスとその妻ベレニケ2世、娘のアルシノエ3世を称えるために制定されたもので、その内容にはエジプトにおける古来の宗教との融合や王家の神格化などの記述が含まれ、税が免除された年の出来事や太陽暦と閏年に関する定めなども書かれている。

この勅令の石碑は、エジプト全土の主要な神殿に配布、掲示するよう命じられたが、これまでに発見されているのは6基で、ヒエログリフとデモティック(民衆文字)、ギリシャ文字の3言語で記されたものが複数ある。しかし、ほとんどが不完全な状態だったため、エジプト観光・考古省は、石碑全体が残っていた今回の発見によって「古代エジプトの歴史や言語への理解が深まる」との期待を表明した。

シャルキーヤ県のテル・エル=ファライン遺跡では、これまでも大規模な神殿や住居の遺構が発掘されてきた。その重要性についてシェリフ・ファティ観光・考古相は、エジプト・デイリー・ニュースの取材にこう答えている。

考古学調査団の成果は、エジプトの偉大な文明に新たな光を投げかけ続けています。今回の発見も、世界中を驚かせる秘密が今なお隠されているシャルキーヤ県の考古学的価値の高さを浮き彫りにするものです」(翻訳:石井佳子)

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