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  • 2024.04.22

第60回ヴェネチア・ビエンナーレの金獅子賞は、「世界的な連帯の重要性」を示すアーティストたちが受賞

4月20日から一般公開が始まったヴェネチア・ビエンナーレで、金獅子賞をはじめとする賞が発表された。国別参加部門はオーストラリア館のアーチー・ムーアが受賞し、参加アーティスト部門はマオリ族の女性アーティストコレクティブ、マタアホ・コレクティブが受賞した。

アーチー・ムーア《kith and kin》(2024)。 Photo: Andrea Rossetti/©Archie Moore/Courtesy of the artist and the Commercial; Commissioned by Creative Australia

4月20日から一般公開が始まった第60回ヴェネチア・ビエンナーレで、金獅子賞をはじめとする各賞の発表と表彰が行われた。

ビエンナーレの最優秀賞はいずれも先住民アーティストが受賞しており、参加アーティスト部門の金獅子賞は、ブリジット・レウェティ、エレナ・ベイカー、サラ・ハドソン、そしてテリー・テ・タウの4人のマオリ族の女性アーティストからなるマタアホ・コレクティブが受賞した。また、国別参加部門の金獅子賞は、オーストラリア館の代表作家を務めるアーチー・ムーアに与えられた。彼は、アボリジニ民族、カミラロイ族とビガンブル族の血を引く作家だ。

今年の芸術祭の総合ディレクターを務めるアドリアーノ・ペドロサがキュレーションを手がけたメイン展示は、アルセナーレ・ディ・ヴェネチアで開催されている。ここでマタアホ・コレクティブは、《Takpau》(2022)と題したポリエステル製のストラップを格子状に編んで作ったインスタレーションを出品。展示空間を覆う形で展開されている本作は、他の展示への橋渡し的な役割も果たしている。審査員たちはマタアホ・コレクティブの受賞理由を次のようにコメントしている。

「マオリ族の女性が代々受け継いできた子宮のような形状のゆりかごに用いられる、伝統的な織物について言及したこのインスタレーションは、宇宙のような広がりとシェルターのような安心感を兼ね備えた作品だ。この巨大な作品は、コレクティブの総合力と創造性によってのみなしえることのできた工学的な偉業と言えるだろう」

国別参加部門の金獅子賞に輝いたアーチー・ムーアは、クイーンズランドを活動拠点に置く作家で、ジャルディーニに設置されたオーストラリア館を二つのインスタレーションで彩っている。一つ目は、パビリオンの壁を黒く塗り、6万5000世代にさかのぼる家系図を数カ月かけてチョークで手書きした作品。パビリオンの中央には、長方形の台座が設置されており、その上には、警察に拘束されている間に先住民が死亡したことを報告する炭消しされた文書が積み上げられている。審査員はムーアの受賞について、次のようにコメントを発表した。

「記録されたものと、消されたものを含む6万5000年の歴史が暗い壁と天井に刻まれている。この展示空間を訪れた鑑賞者たちは、悲痛な記録の本質的なもろさを受け止めるよう求められているのだ」

若手アーティストに授与される銀獅子賞は、ロンドン生まれナイジェリア育ちの、現在はハンブルクとラゴスを拠点に活動するカリマ・アシャドが受賞した。ビエンナーレにおいて彼女は、2022年にラゴスで禁止されたオカダという二輪車のタクシーに焦点を当てた映像作品《Machine Boys》(2024)を展示している。

審査員たちは、「彼女のカメラは非常に繊細かつ被写体に寄り添う形で構えられており、ラゴスのバイカーたちのカルチャーと、経済的な不安定さを捉えている」と評価した。

世界平和への祈りを作品に込めたアーティストたち

今年のビエンナーレの審査委員長は、コロンビア大学の美術史教授であり、キュレーターのジュリア・ブライアン=ウィルソンが務めている。ブライアン=ウィルソンは、インドネシアのジョグジャ・ビエンナーレ財団のディレクターを務め、キュレーターと文筆家でもあるアリア・スワスティカ、ナイジェリア人のキュレーター兼批評家で、プリンストン大学で美術史と黒人学を研究するチカ・オケケ=アグル、イタリア人キュレーターで、ロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーの展示ディレクターを務めるエレナ・クリッパ、そして、フランス系コロンビア人のキュレーターでブリュッセルのウォルター・ルブラン財団のディレクター、熱帯地域のアートを扱うメディア『Tropical Papers』のアートディレクターも務めるマリア・イネス=ロドリゲスの4名の審査員とともに受賞者を選出した。

さらに審査員たちは、メイン展示に参加したサミア・ハラビーと、ラ・チョーラ・ポブレテ、そしてドルンティナ・カストラティのインスタレーションを展示したコソボ共和国に、特別賞を授与している。

ニューヨークを拠点に活動するパレスチナ人アーティスト、サミア・ハラビーは今回アルセナーレで行われている「Nucleo Storico(歴史核)」に抽象画《Black Is Beautiful》(1969)を出品している。審査員の一人、オケケ=アグルは、「彼女の抽象画の政治性へのコミットメントは、パレスチナの人々が直面している困難への揺るぎない関心と結びついている。彼女の素晴らしいモダニズム絵画は、想像力の主権は誰にあるのかという問いに加え、世界的な連帯の重要性を示唆している」と評価した。

すでにニューヨークに戻っていたハラビーはオンラインで記者会見に参加し、今回の受賞を「ガザで殺害された若き報道陣に捧げる」として、「彼らが目指した人類の文化の記録は、国籍を持たない世界の先住民すべてにとって重要な意味を持つ素晴らしき贈り物だった。しかしそれゆえに、彼らは命を落としたのだ」と語った。

また、水彩画の組作品を出品しているラ・チョラ・ポブレテについて審査員団は、「彼女の作品は、先住民のトランス女性としての視点から植民地的表象の歴史を批評している。その多義的な芸術は......セクシュアリティの力を主張する一方で、先住民女性をエキゾチックな存在として捉えることへの抵抗でもある」とコメントした。

コソボ館の代表作家として参加したドルンティナ・カストラティは、トルコ菓子の工場生産をテーマにした彫刻作品を出品している。審査員はこのパビリオンを、「サウンドスケープの振動が床を通じて私たちの骨に響くと同時に、フェミニストたちの活動というより大きな舞台にも届いている」と称えた。

また、栄誉金獅子賞を受賞したアンナ・マリア・マイオリーノとニル・ヤルターは壇上に上がり、トロフィーを受け取った(ペドロサは両受賞者とセルフィーを撮っていた)。イタリア生まれで現在はブラジルを拠点に活動するマイオリーノは、「この賞を、長年私を受け入れてくれたブラジルとブラジルの芸術に捧げます」と喜びを語った。ペドロサは短いコメントの中で、彼女を「ブラジルとそれ以外の国の何世代にもわたる芸術家たちを象徴する存在」と評価した。

また、ペドロサが「特に移民をめぐる研究と制作という点で、視覚芸術に並外れた貢献をした」とコメントしたヤルターは、トロフィーの形状にちなんで「この空飛ぶライオンを、世界平和に捧げます。世界平和以外に、私たちに必要なものはありません」と語った。

記者会見の最後に、イタリアのジェンナーロ・サンジウリアーノ文化相は、ビエンナーレに先立ちペドロサがニューヨーク・タイムズ紙に語った「ビエンナーレにはプロジェクトを発展させるための完全な自由と自主性がある」という言葉に触れ、これからもビエンナーレはそうあり続けることを聴衆たちに約束した。(翻訳:編集部)

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