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  • 2024.05.09

美大生100人超が新たに逮捕。アメリカの大学で激化する反戦デモ、逮捕者は累計2300人以上に

アメリカ全土で広がる、イスラエルによるパレスチナへの攻撃中止を求める学生運動。その逮捕者は5月8日時点で約50大学、2300人を超えた。このデモ活動に参加する美術大学のうち、いずれも抗議キャンプを行っていたシカゴ美術館付属美術⼤学(SAIC)が5月4日に68⼈、7日にニューヨークファッション⼯科⼤学(FIT)で約50⼈が逮捕された。

2024年5月4日、イリノイ州シカゴ美術館の敷地内で警察に拘束されるシカゴ美術館付属美術⼤学の学生たち。Photo: Scott Olson/Getty Images

反戦デモに参加したシカゴ美術館付属美術⼤学(SAIC)とコロンビア・カレッジ・シカゴの学生たちは、シカゴ美術館のノース・ガーデンを、ガザ地区でイスラエル軍によって家族とともに殺害されたパレスチナ⼈の6歳の少⼥、ハインド・ラジャブにちなんで「ハインドの庭」と名づけ、5月4日、そこにテントを張り、抗議キャンプを行った。デモ参加者が地元メディアのアクシオスに語ったところによると、運営側は学生たちが校舎に移動すると約束すれば、5月5日の朝までキャンプをすることに同意したが、学生らが条件について議論中に、警察が現場に突入した。

2024年5月4日、イリノイ州シカゴで、シカゴ美術館付属美術⼤学の学生がシカゴ美術館の敷地内に抗議キャンプを設営した。Photo: Scott Olson/Getty Images

シカゴ・サンタイムズによると、警官は学生たちを突き⾶ばしたり地面に押さえつけたりして制圧し、学生の数名は切り傷や打撲傷を負ったという。テントは同日午後5時までに撤収され、警察に連行された学生たちは、携帯電話や私物を没収された上で、シカゴ市警察の第19地区署で⼀晩拘束された。

SAICのエリッサ・テニー学長とマーティン・バーガー学長兼教務担当上級副学長が今回の騒動について発表した共同声明によれば、学生たちの抗議行動がシカゴ美術館前の公道でエスカレートし始めたため、来館者と従業員の安全のために別の場所を探す決断をしたという。学校側はまた、学生側の交渉担当と話したが、5時間経っても合意に至らなかったため、シカゴ市警察が「可能な限り安全な⽅法で」抗議活動を終了させたと主張した。

2024年5月4日、警察によってシカゴ美術館の敷地内に設営した抗議キャンプから連行される学生。Photo: Scott Olson/Getty Images

「People's Art Institute」と名乗るSAICの抗議活動参加者は、インスタグラムに投稿した声明で大学上層部の説明に異議を唱え、こう訴えた。

 「ノース・ガーデンでの抗議行動の⽬的は明らかでした。パレスチナ⼈⺠と連帯し、SAICとシカゴ美術館が、パレスチナにおける占領と⼤量虐殺で利益を得ている団体、まずは武器製造を行うクラウン一族との関係を断つことを要求しました。SAICとシカゴ美術館の上層部は、安全の名のもとに我々に対する今回の行動に至ったと声明を通じて発表しましたが、私たちの抗議行動の理由には一切⾔及していません。明確にしておきたいのは、私たちの渉外担当者は上層部からの申し出を、いかなる時点でも拒否していないということです。ただ、変更を検討するよう要求しただけです」

2024年5月4日、警察によってシカゴ美術館の敷地内に設営した抗議キャンプから連行される学生。Photo: Scott Olson/Getty Images

アメリカの大学では、これまで多数のイスラエル・ガザ紛争に対する反戦デモが行われてきたが、その多くが公園やキャンパス内の芝生広場などにテントを張り野営するという抗議キャンプのかたちをとっていた。中でもコロンビア⼤学、ニューヨーク⼤学、ニュースクールでは長期間にわたり抗議キャンプが続いたが、5月7日の大規模な警察の介入によっていずれも解体された。コロンビア⼤学は5月15日に予定していた卒業式の中止を発表し、ニューヨーク市警がキャンパス内に常駐する措置を取った。制圧されつつある学生たちの反戦デモだが、ロードアイランド州プロビデンスにあるロードアイランド・スクール・オブ・デザインの学⽣たちは、現在もキャンパスの建物を占拠し抗議行動を続けている。

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