英金属探知機愛好家、有機農場で古代ローマの鉛インゴットを発見。帝国時代の鉱物供給網のヒントに
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
イギリス・ウェールズのセレディギオン州で、金属探知機愛好家の2人が古代ローマ時代の鉛インゴット2点を発見した。皇帝ドミティアヌスの刻印が残るこれらの遺物は、この地域がローマ帝国の資源供給網に組み込まれていたことを物語る貴重な証拠と考えられている。
イギリス・ウェールズのセレディギオン州ランギンヴェリンで、金属探知機愛好家のニック・ヤロープとピーター・ニコラスが、古代ローマ時代の鉛インゴット2点を発見したとBBCが報じた。
2025年、2人が農地の所有者ジェライント・ジェンキンスの許可を得て探査を行っていると、金属探知機が反応。掘り返したところ、地表約45センチの深さから鉛製のインゴット2点が出土した。約2メートルの間隔で埋まっていたそれらは、長さ約60センチの細長い台形状で、重さはそれぞれ約7キログラムだった。
2人はイギリスの1996年宝物法(Treasure Act 1996)に基づき、Portable Antiquities Scheme(PAS)に発見を報告。その後、ウェールズの考古学調査を担う新設の独立組織ヘネブ(Heneb)が現地で大規模な調査を実施した。
セレディギオン博物館の研究者による調査では、インゴット上部に「IMP DOMIT CAE AUG XIII COS(皇帝ドミティアヌス・カエサル・アウグストゥス、13回目の執政官)」という刻印が確認された。これは西暦87年、皇帝ドミティアヌス(在位81〜96年)の治世6年目にあたり、ローマ人がこの地域に到来してからおよそ15年後とみられる。ドミティアヌスは数多くの公共事業を推進したことで知られる一方、元老院からは不人気だったことでも知られている。
この発見について、セレディギオン博物館の学芸員キャリー・カーナムは声明で次のように述べている。
「セレディギオンに豊富に存在する鉱物資源は、ローマ人がこの地域を征服しようとした主な理由の一つでした。ここで採掘された鉛はローマ帝国全域へと運ばれており、今回のインゴットは、ドミティアヌスの時代においてセレディギオンが帝国の資源供給に重要な役割を果たしていたことを示しています」
続いてヘネブの代表キャロル・ベルは、こう説明する。
「ローマ帝国では、鉛は配管や浴場の建設などに広く用いられ、高い需要がありました。ドミティアヌスの時代、セレディギオンはその供給網の重要な一部を担っていたとみられます。こうした資源の存在こそが、ローマ人が西ウェールズを征服した大きな動機だった可能性があります」
一方、発見者のヤロープは、「このインゴットを通して、地域の歴史の新たな一章が明らかになったことは非常に興奮する経験でした」と喜んだ。土地の所有者であるジェンキンスもこの発見に驚きを示し、「現在は有機農業を行っているこの土地が、かつてローマ帝国という広大な世界の一部として機能していたと考えると実に興味深い」とコメントしている。
インゴットは今年1月、正式に「宝物」と認定された。今後、評価委員会が市場価値を査定し、その金額で地元の博物館が取得する機会が与えられる。支払われた金額は、発見者と土地所有者で半分ずつ分配される予定だ。
セレディギオン博物館は、この2つのインゴットをコレクションとして取得し、2027年に開設予定の新しい考古学ギャラリーで展示することを目指している。取得はまだ確定していないものの、発見者のニコラスはアートネットの取材に、「自分が発見したものは、常に喜んで寄贈に応じてきました」と話している。
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