55年前に盗まれた名画をFBIが奪還! 96歳の遺族のもとへ戻せたことは「またとない喜び」
1969年に盗まれたイギリスの画家ジョン・オピー(1761-1807)の絵画が、2年にわたるFBIの捜査の末、持ち主の家族のもとへ戻された。
盗まれた絵画は、ジョン・オピーが制作した約1メートル×1メートル30センチの油彩《The School Mistress》(1784)で、1930年代にアール・ルロイ・ウッド博士が7500ドル(現在の為替で約110万円)で購入した。
しかし1969年7月7日、3人の窃盗団がウッド博士の自宅に押し入り、コインコレクションを盗もうとしたが防犯アラームが鳴ったため失敗。7月25日、2度目の犯行でこの絵画が盗まれた。
FBIソルトレイクシティ支局の発表によると、逮捕された窃盗団の1人は1975年に行われた裁判で、絵画の窃盗は、ウッド博士宅での強盗未遂時に駆けつけた、ニュージャージー州上院議員だったアンソニー・インペリアーレの指示だったと供述した。
当時、事件現場でウッド博士の家の管理人が、インペリアーレ上院議員に、《The School Mistress》について「値段がつかない貴重なもの」と説明していたという。
窃盗団の1人は、インペリアーレに絵を渡したと証言したものの、主張が十分に裏付けられず起訴されることはなかった。
絵画の行方は分からないままだったが、2021年12月、ユタ州にある会計事務所が、2020年に死去した人物の住居および個人財産の清算を行っていた際に、この絵画を発見。オークションに出品するために作品を鑑定したところ、ウッド博士の家から盗まれたものであることがわかった。会計事務所はFBIに通報した。
調査によれば、このオピーの絵画はユタ州の人物の手に渡る以前、フロリダ州ハランデールにあるマフィアのジョセフ・コヴェロ・シニア(1989年に有罪判決)の邸宅にあったという。その後、この人物はコヴェロ・シニアの家を買い取ったが、のちに売却する際、絵画などの調度品をまとめてユタ州の自宅に移したようだ。
こうして2024年1月、《The School Mistress》は、アール・ルロイ・ウッド博士の現在96歳になる息子フランシスに返還された。
FBIのゲイリー・フランス特別捜査官特別捜査官は、今回の捜査について、「重要な芸術品や文化を取り戻し、盗まれた遺産と遺族を再会させる役割を果たしたことは名誉なことでした。犯罪捜査が傷跡を残すことが多いこの世界で、歴史と正義、そしてウッド家の勝利という、ウィンウィンな事件解決の一端を担えたことは、またとない喜びでした」と語った。
現在、ロンドンのテート・ブリテンで、オピーが1784年に制作した、同名の姉妹作が展示されている。(翻訳:編集部)
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