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《フルートを持つ女》はフェルメール作品ではない!? 米ナショナル・ギャラリーが調査結果を報告

ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーにある4点のフェルメール作品のうち1点が、長期にわたる調査の結果、フェルメール作ではないと判断された。10月7日(現地時間)、同館の専門職員が発表した。

研究者がフェルメール特有の精密さに欠けると判断した《フルートを持つ女》 Photo: National Gallery of Art

この事実は、フェルメールをめぐる数十年にわたる論争に決着をつけると同時に、オランダの巨匠の生涯について新たな謎を生み出した

今回、フェルメール作ではないとされたのは、《フルートを持つ女》(1665-75頃)。記者会見で歴史家は、この作品は彼の技法を熟知した人物が描いたものであることを明かし、フェルメールが1人で描いたという説に疑問を投げかけた

発表されたのは、ナショナル・ギャラリーで開催中の展覧会「Vermeer’s Secrets(フェルメールの秘密)」(会期:10月8日〜2023年1月8日) 開幕前日。本展は、2020年に修復を終えた《フルートを持つ女》 を含む、滅多に公開されることのない同館所蔵のフェルメールの絵画4点の調査結果が紹介される貴重な機会としても注目されていた。

同館の学芸員、保存修復師、科学者からなるチームは、《フルートを持つ女》 が「フェルメールの『仲間』によって描かれたもので、フェルメール自身によるものではない」という仮説のもと、科学的分析と肉眼での検査を実施した。調査は、20年からのパンデミックによる長期休館中に保存ラボで行われた

専門家らは、同じようなサイズであり、フェルメールの作品には珍しく木に描かれていた《フルートを持つ女》と《赤い帽子の女》を比較。それぞれを顕微鏡で見ると、《フルートを持つ女》にはフェルメール特有の精緻さがないことがわかった。さらに、表面の絵の具の層には、粗く挽かれた顔料が含まれており、彼の作品とされる35点の絵画の滑らかな仕上げとは相容れないものだった。

では、《フルートを持つ女》を描いた「仲間」とは一体誰なのか。フェルメールの工房の存在を示す資料は現存せず、生徒や助手の記録もない。残された作品は35点しかないため、美術史家たちは、フェルメールに弟子や助手はいなかったと考えてきた。彼がプロジェクト単位で雇ったフリーランスの画家か、あるいは画家の家族の誰かが描いた可能性が指摘されている。

同館のディレクターであるケイウィン・フェルドマンはプレスリリースに、「ヨハネス・フェルメールと共に活動した他の画家の存在は、おそらくこの数十年で発見された、この画家に関する最も重要な新発見の一つ。フェルメールに対する我々の理解を根本的に変えるものだ」とコメントしている。(翻訳:編集部) 

  ※本記事は、米国版ARTnewsに2022年10月10日に掲載されました。元記事はこちら。 

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