【ARTnews Awards 2024】が決定! 「最優秀新人アーティスト賞」は、斬新な素材使いで自らのアイデンティティに切り込むエディ・ロドルフォ・アパリシオ
US版ARTnewsは、アメリカの芸術機関における優れた業績を称える初のアワード「ARTnews Awards」を発表した。審査員を務めたのは、第59回ヴェネチア・ビエンナーレのディレクターを務めたチェチリア・アレマーニ、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の副館長であるナオミ・ベックウィズなど、アメリカ在住の著名なキュレータ6人と、US版ARTnewsのシニアエディター2人。選考の対象は、2023年9月1日から2024年8月31日までの間に開催された展覧会で、5部門から各1名が選出された。そのうち、最優秀新人アーティストに選ばれたのは、ロサンゼルス現代美術館でキャリア初となる美術館での個展を実施したエディ・ロドルフォ・アパリシオだ。
ロサンゼルス現代美術館(MOCA)が過去に開催していた展覧会シリーズ「MOCA Focus」を再始動させるにあたり白羽の矢を立てたのは、ロサンゼルス在住のアーティスト、エディ・ロドルフォ・アパリシオだった。MOCA別館のゲフィン・コンテンポラリーで開催された「MOCA Focus: Eddie Rodolfo Aparicio」は、アパリシオの回顧展であると同時に作家にとって初の美術館個展。そこでは、2016〜2023年に制作された作品と、サイトスペシフィックなコミッションワーク3作品が展示された。
ロサンゼルスと父フアン・エドガー・アパリシオの故郷エルサルバドルの歴史を紐解いてきたアパリシオは、一風変わった素材を用いることで注目を浴びた。たとえば本展で展示された初期の作品は、《Caucho (Rubber)》と題されたアパリシオが現在も制作し続けている連作で、イチジクの木をロサンゼルスに植え、その木をサルバドール原産のカスティーリャ・エラスティカという木から採取されたゴムで覆うというもの。彼はこの作品を彫刻として展示し、結び目やスモッグ、落書きなど、ロサンゼルスの都市景観の肖像画として展示している。
この回顧展の開催にあたりアパリシオがまず直面したのは、設営の問題だったという。ロサンゼルス市は、展示スペースを約55平方メートル縮小しなければ、予定されていた場所での展示を許可しないという条件を提示してきた。これを逆手に取ったアパリシオは、新たに《601ft2 para El Playon / 601 sq. ft. for El Playon》と題された作品を制作。琥珀を用いて作られた作品は、火山岩、特別に作られた陶器製の骨、エルサルバドル内戦に関する文書、ロサンゼルスのエルサルバドル人コミュニティの中心地であるマッカーサー・パークで拾った品々など、エルサルバドルの歴史にまつわるものを内包していた。これらの作品は、数十年前に起きた火山噴火で多くの行方不明者が遺体となって発見された、エルサルバドルの首都サンサルバドルの郊外にあるエル・プラヨンを模した形をしていた。
私たちに新たな視座を提供するアパリシオの作品には、実験的な取り組みと素材に対する斬新な態度が見て取れる。MOCAでの展示は、彼の確かな将来性を示すものだった。(翻訳:編集部)
ノミネート
- サーシャ・ゴードン「Sasha Gordon: Surrogate Self」
- チャール・ジェレ「Char Jeré: Zoo or an Orchestra」
- レスリー・マルティネス「Leslie Martinez: The Fault of Formation」
- バルバラ・サンチェス・カネ「Bárbara Sánchez-Kane: New Lexicons for Embodiment」
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