【ARTnews Awards 2024】が決定!「ベストテーマ賞」はアジア系アメリカ人アーティストによるグループ展「Scratching at the Moon」
US版ARTnewsは、アメリカの芸術機関における優れた業績を称える初のアワード「ARTnews Awards」を発表した。審査員を務めたのは、第59回ヴェネチア・ビエンナーレのディレクターを務めたチェチリア・アレマーニ、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の副館長であるナオミ・ベックウィズなど、アメリカ在住の著名なキュレータ6人と、US版ARTnewsのシニアエディター2人。選考の対象は、2023年9月1日から2024年8月31日までの間に開催された展覧会で、5部門から各1名が選出された。そのうち、「ベストテーマ賞」に選ばれたのは、アジア系アメリカ人アーティストたちによるグループ展「Scratching at the Moon」だ。
「ベストテーマ賞」に選ばれたのは、ロサンゼルス現代美術館で開催されたグループ展「Scratching at the Moon」。本展は3年前、アーティストのアンナ・ソウ・ホイがロサンゼルス現代美術館の館長アン・エレッグッドに、アジア系アメリカ人アーティストの展覧会を企画したいと持ちかけたことからはじまった。その背景には、コロナ禍で起きたアジア系アメリカ人に対するヘイトの増加、そして漠然とした不安感の蔓延があった。しかし、時を経て開催された同展では、そうした問題はあくまで背景に留まり、代わりにロサンゼルスと繋がりを持つアジア系アメリカ人アーティストの繋がりに焦点が当てられていた。
同展では、アジア系アメリカ人コミュニティを代表する、世代を超えた13人のアーティストたちの作品が紹介された。ロサンゼルスで同様のテーマを掲げた展覧会はこれまで開催されたことがなく、それだけでも同展は十分に意義深いものだった。ソー・ホイとエレグッドは、繋がりを可視化するとはどういうことかを根本から問い直すことを試みた。同展に参加したアーティストの多くは、開催期間中に死去したヨン・スーン・ミンのように、美術機関がアジア系アメリカ人アーティストに注目していなかった時代から後進を育成してきた作家たちだ。「Scratching at the Moon」では、そうしたコミュニティ内での取り組みが何世代も前から行われていたことも明らかにされていた。
また、ソー・ホイとエレグッドは、同展のキュレーションにあたり、バージニア州リッチモンド大学教授でポストコロニアル学の研究者、ジュリエッタ・シンが提唱する「人間の身体は直線的な歴史を超越した無限のアーカイブのようなものとして機能する」という考えにもインスピレーションを得たという。参加作家のアマンダ・ロス=ホはアーティストだった両親から、そして1982年生まれのナ・ミラは同じく韓国系で1970年代に活躍したテレサ・ハッキョン・チャ(1951-1982)から、そうした視点の影響を受けていたことに気づいたという。
日系人アーティストのディーン・サメシマは、マッサージ店やゲイバー、クラブで撮影した写真を展示した。しかしそれら作品に客の姿はなく、彼らの痕跡だけが残っている。一方、パティ・チャンは、科学者がイルカの死因を調査する映像を上映した。だがこれらの作品には陰鬱さはなく、むしろ、生命と団結を祝うものだった。ソー・ホイとエレグッドは、カタログにこう記している。
「私たちはこれまで共に生き延び、繁栄してきました。そしてこれからも、言葉、思考、行動を通じて、その歴史の証人であり続けていきます」(翻訳:編集部)
ノミネート
- 「The Land Carries Our Ancestors: Contemporary Art by Native Americans」(ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ニューブリテン・ミュージアム・オブ・アメリカンアート)
- 「Made in L.A. 2023: Acts of Living」(ハマー美術館)
- 「Multiplicity: Blackness in Contemporary American Collage」(フリスト美術館)
- 「Only the Young: Experimental Art in Korea, 1960s–1970s」(グッゲンハイム美術館)
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