【ARTnews Awards 2024】が決定! 「最優秀アーティスト賞」は、鑑賞者の意識を宇宙に誘うデルシー・モレロス
US版ARTnewsは、アメリカの芸術機関における優れた業績を称える初のアワード「ARTnews Awards」を発表した。審査員を務めたのは、第59回ヴェネチア・ビエンナーレのディレクターを務めたチェチリア・アレマーニ、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の副館長であるナオミ・ベックウィズなど、アメリカ在住の著名なキュレータ6人と、US版ARTnewsのシニアエディター2人。選考の対象は、2023年9月1日から2024年8月31日までの間に開催された展覧会で、5部門から各1名が選出された。そのうち「最優秀アーティスト」に選ばれたのは、デルシー・モレロスだ。
デルシー・モレロスは、土を用いた大型彫刻作品など人間と大地との関わりを探求する大規模なインスタレーションで知られる作家だ。土や乾し草、シナモン、クローブなどを多用しながら、彼女は独自の宇宙観を表現し、観る者を非日常的な意識状態に誘うことを目指している。簡素な美しさをもつモレロスの巨大彫刻は、1960〜1970年代のミニマル・アートを彷彿とさせるが、彼女曰く、アマゾンの先住民文化の叡智と美学に直接的な影響を受けている。
こうした背景もあり、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートの助成・収蔵を行ってきたディア芸術財団が彼女の個展「Delcy Morelos: El abrazo」をディア・チェルシーで開催したのは自然な流れだったと言える。同財団のディレクターを務めるジェシカ・モーガンは、西洋規範にすでに定着しているミニマリズム以外のものも含め、財団の支援対象を多様化することを目標の一つに掲げている。コロンビアのティアエラルタで生まれ、現在は首都ボゴダを拠点に活動するモレロスの作品は、リチャード・セラやロバート・モリス、ウォルター・デ・マリアといったディア芸術財団が所蔵するミニマル・アートの工業的な作品とはひと味違う。
「Delcy Morelos: El abrazo」で展示された《El abrazo》と《Cielo terrenal》(いずれも2023年)は、デ・マリアの《New York Earth Room》(1977年)を参照しているという。後者は、ハドソンバレーで採取した黒い粘土が用いられ、彼女はそれを財団の展示スペースの壁と床にも塗りつけた。また、ディア財団の過去の展示で出た廃棄物も、作品の一部として使われていた。一方、前者の《El abrazo》は、乾し草やヤシの繊維を混ぜた再生土で構成されており、来場者は作品の中央に切り取られた三角形のエリアに入り、土の香りを吸い込むことができる。一般的な展示で作品に密に触れられることはめったにないが、《El abrazo》の説明書きには、作品に触れても問題ないと明記されていた。
これら2作品からも分かるとおり、モレロスは感覚的な鑑賞を重視するアーティストだ。展覧会の図録には、「to touch the earth is to be touched by her(地球に触れることは、地球があなたに触れること)」と書かれていた。この展覧会を訪れた観客は、自分たちの周りの世界に対するより深い感覚を得たに違いない。(翻訳:編集部)
ノミネート
- フィレレイ・バエズ「Firelei Báez」
- ヒュー・ヘイデン「Hugh Hayden: Hughmans」
- ルバイナ・ヒミッド「Lubaina Himid: Make Do and Mend」
- ポール・ファイファー「Paul Pfeiffer: Prologue to the Story of the Birth of Freedom」
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