「激烈にわいせつ」な地上絵は、子宝の象徴かキリスト教に対する冒涜か。英観光名所に新事実

豊穣を願う象徴として語り継がれてきた、イギリス南西部の巨大な裸像「サーン・アバスの巨人」。そこに描かれた長さ10メートルにも及ぶ性器をめぐって、「激烈にわいせつ」との声が約90年前に上がり、覆い隠す計画が提案されていたことがわかった。

サーン・アバスの巨人。2001年に撮影。Photo: Wikimedia Commons
サーン・アバスの巨人。2001年に撮影。Photo: Wikimedia Commons

イギリス南西部の農村に描かれた、裸の男の巨大な地上絵、サーン・アバスの巨人。国内でも有数の観光名所として知られるこのヒルフィギュアに描かれた性器が、1930年代に隠されそうになったことをご存じだろうか。

サーン・アバスの巨人は、アングロ・サクソン人が地面の下に隠れている石灰岩を露出させて作ったとされる、棍棒を持つ全長180フィート(約55メートル)に及ぶ男性の裸像だ。この巨大な地上絵が初めて文書上で記録されたのは17世紀後期にさかのぼるが、作られた目的や制作された正確な時期などは依然として分かっていない。この地上絵は豊穣の象徴とされ、子宝を願うカップルが夜になると地上絵を訪れていたと伝えられている。

巨像の性器がおよそ90年前に隠されそうになったという事実は、作家兼歴史家のカレン・ヒーニーが近日刊行予定の書籍を執筆するための調査中に発見された。テレグラフ紙によれば、ドーセット州に住むウォルター・ロングが「キリスト教的な価値観を冒涜しているわいせつな絵」と苦情を申し立てた後、1932年に内務省職員のセシル・イェーツがナショナル・トラストに手紙を送り、その内容がイギリスの考古学誌アンティクィティに掲載されたという。ロングの申し立てには次のように記されていた。

「手紙に同封されたスケッチが不快に感じられるようでしたら、ドーチェスターからシャーボーンへの幹線道路に面して描かれた、スケッチの2万7000倍の大きさの巨人の存在を知っていただきたい。激烈にわいせつなこの作品は、次の世代が健全に育つことを願う人たちを不快にさせています。私をはじめとする地域住民は、この地上絵をキリスト教的文明の基準に即すものに変更していただけるようお願いしたく、お手紙を差し上げた次第です」

ロングの手紙を受けた内務省職員のイェーツは、ナショナル・トラストに対し、35フィート(約10メートル)の勃起した男性器を木で覆うことを提案した。しかしドーセット警察署長の意見を踏まえ、内務省は国の指定遺跡を損なうおそれがあるとして、この案を却下した。

この地上絵は、完成当初と比べて一部が消失、あるいは形が変わったと考えられているが、現在でも主要な観光地となっている。(翻訳:編集部)

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