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グッゲンハイム美術館、権威あるヒューゴ・ボス賞の終了を発表。過去にはヤン・ヴォー、シモーヌ・リーが受賞

9月23日、ニューヨークのグッゲンハイム美術館がARTnewsに対し、権威あるヒューゴ・ボス賞の開催を終了すると伝えた。2年に一度のこの賞は、10万ドルという賞金に加え、受賞者が同館で個展を行うことから常に大きな注目を集めていた。

グッゲンハイム美術館 Photo: David Heald/©The Solomon R. Guggenheim Foundation, New York

ヒューゴ・ボス賞は、1996年にグッゲンハイム美術館がファッションブランドのヒューゴ・ボスと共同で設立したもの。同美術館のウェブサイトによれば、「最も革新的で影響力ある活動を行っているアーティストの作品を表彰し、現代アート分野における功績を称える」ことを目的としていた。

創設以来、この賞を受賞したアーティストは以下の13人。すでにトップクラスにいた作家が、さらに名声を高める一助になっている。

マシュー・バーニー(1996年)
ダグラス・ゴードン(1998年)
マルジェティカ・ポトルチ(2000年)
ピエール・ユイグ(2002年)
リクリット・ティラヴァーニャ(2004年)
タシタ・ディーン(2006年)
エミリー・ジャシール(2008年)
ハンス=ペーター・フェルドマン(2010年)
ヤン・ヴォー(2012年)
ポール・チャン(2014年)
アニカ・イ(2016年)
シモーヌ・リー(2018年)
ディアナ・ローソン(2020年)

中でも、2020年10月に発表されたディアナ・ローソンの受賞は、写真家として初の受賞だったことから大きな反響を呼んだ。

最終選考の前に発表される受賞候補者の面々も豪華な顔ぶれだ。たとえば、セシリア・ビクーニャ、ケビン・ビーズリー、蔡國強、ローリー・アンダーソン、マウリツィオ・カテラン、ヴィト・アコンチ、ティノ・セガール、ダミアン・オルテガ、パティ・チャン、カミーユ・アンロ、ローラ・オーウェンズ、ウー・ツァン、テレサ・マルゴレス、ラルフ・レモンなど。ラルフ・レモンは先頃、ホイットニー美術館の2022年バックスバウム賞(賞金10万ドル)を受賞している。

さらに、世界的な影響力を持つキュレーターたちが長年審査員を務めてきた。ビシ・シルヴァ、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、オクウィ・エンヴェゾー、ロバート・ローゼンブラム、クリストファー・Y・ルー、そして最近グッゲンハイム美術館のチーフキュレーターに就任したばかりのナオミ・ベックウィズなどだ。各回の審査委員長は、グッゲンハイム美術館の元アーティスティックディレクター兼チーフキュレーターのナンシー・スペクター。

グッゲンハイム美術館の広報担当者は、22年の発表時期に関するARTnewsの質問に対し、こう回答した。

「ヒューゴ・ボス賞は今後継続されません。ソロモン・R・グッゲンハイム財団は、96年の同賞創設以来、ヒューゴ・ボスと協力し、イノベーティブかつ時代の文化を反映しているアーティストに賞を授与してきたことを光栄に思います。また、実り多いプロジェクトの終了にあたり、ヒューゴ・ボスの長年の支援に感謝します。賞の関連企画として実現した革新的な展覧会、カタログ、公開プログラムがグッゲンハイム美術館にもたらした影響は、決して消え去ることはないでしょう」

また、同美術館のチーフキュレーター、ナオミ・ベックウィズは、ARTnewsに送られた声明で次のように述べている。

「ヒューゴ・ボス賞が登場するまで、世界は今ほどの関心をアートに向けてはいませんでした。現代アートが世界中の主な美術館で展示企画の主軸を占めるようになった背景には、この賞の存在があります。この賞のおかげでグッゲンハイム美術館は現代アートをより多くの人たちに届けられるようになりました。また、アートがグローバルな社会やカルチャーにおける存在感を増したことは、今日のファッションや音楽、映画、ソーシャルメディアを見れば明らかです。アートをめぐる状況を一変させたと言えるでしょう」

ARTnewsはヒューゴ・ボスにコメントを求めたが、記事公開時点で返答は得られていない。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月23日に掲載されました。元記事はこちら

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