カシーム・ディーン(スウィズ・ビーツ)&アリシア・キーズ(Kasseem “Swizz Beatz” Dean and Alicia Keys)
拠点:アメリカ・カリフォルニア州ラホヤ
職業:音楽プロデューサー、ミュージシャン、起業家
収集分野:有色人種の作家を中心とした現代アート
音楽界のパワーカップル、スウィズ・ビーツことカシーム・ディーンとアリシア・キーズは、近年アート界でもさまざまなプロジェクトを立ち上げている。ディーンは、アーティストが仲介業者なしに作品の買い手を見つける方法として、世界各地でノーコミッションのアートフェアを開催するなどの試みを行い、直接販売を可能にする「Sm(art)コレクション」というアプリも開発している。
コレクターとして、またパトロンとしても、ディーンとキーズは一目置かれる存在だ。そのコレクションは、ヘンリー・テイラー、ジョーダン・キャスティール、リネット・ヤドム・ボアキー、ツカバラ・セルフ、ケヒンデ・ワイリー、トイン・オジ・オドゥトラ、アーサー・ジャファ、サイ・ギャバンといった黒人作家の作品が中心だが、もちろん黒人以外のアーティストも含まれている。また、黒人写真家の草分け的存在であるゴードン・パークスの作品も、個人コレクションとしては最大級の所蔵点数を誇っている。
音楽界の仲間をアートコレクションの道に引き込んできたのも、ディーンとキーズの功績と言えるかもしれない。2018年、ディディことショーン・コムズがサザビーズ・ニューヨークで、ケリー・ジェームズ・マーシャルを2110万ドル(約30億円)という記録的な落札額で手に入れた裏にはディーンの勧めがあった。ディディがブラックアートに興味を持つまで「10年かかった」と、ディーンは2019年にUS版ARTnewsに話している。「『このケリー・ジェームズ・マーシャルは文化の歴史に残るべき』という感じだった。ディディは、『俺が毎日これをやると思うなよ』と言っていたが」。ディーンは2015年にブルックリン美術館の理事に就任し、フィランソロピー分野でのリーダーへの道を歩んでいる。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。