今週末に見たいアートイベントTOP5:約60作家が伝える90年代英国美術のダイナミズム、毛利悠子らの実践から「私たちの現在地」を考える
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. 闇市と都市―Black Markets and the Reimagining of Tokyo(高島屋史料館TOKYO)
戦後の焼け跡に生まれた、東京の生成過程
戦後80年という節目に開催される本展は、戦後の混乱期に各地で生まれた「闇市」に焦点を当て、東京という都市がどのように形成・更新されてきたのかを歴史的にひもとく。空襲による焼け跡や建物疎開によって生まれた空地は、戦後、人々の生活を支える即興的な市場へと変貌した。とりわけ東京に形成された闇市は、やがて現在の繁華街へと姿を変え、都市のダイナミズムを象徴する存在となった。
本展では、写真や図面、資料を通して、闇市が持っていた暫定性や流動性を可視化する。戦争は都市を破壊しただけでなく、結果として都市の新陳代謝を促した側面もあった。私たちが日常的に歩く東京の街並みの中に、いまなお残る闇市の痕跡を見出すことで、都市の成り立ちを捉え直す視点を与えてくれる。
闇市と都市―Black Markets and the Reimagining of Tokyo
会期:2025年9月13日(土)〜2026年2月23日(月祝)
場所:高島屋史料館TOKYO4階展示室(東京都中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋S.C.本館)
時間:10:00〜19:30(入場は30分前まで)
休館日:火曜
2. 世界のブックデザイン2024–25(印刷博物館)
デジタル時代にあらためて問う、「本」というメディアの可能性
ドイツ・ライプツィヒで開催された「世界で最も美しい本2025コンクール」の受賞作を中心に、各国の造本・装幀コンクールの受賞図書約180点を紹介する。展示されるのは、日本、ドイツ、カナダ、オランダ、中国、ポーランド、ポルトガルなど、多様な文化圏で評価された書物たち。とりわけポーランドとポルトガルの受賞作品は本展初紹介となり、国や言語を越えた造本思想の差異と共通点が浮かび上がる。
来場者は、作品として眺めるだけでなく、実際に本を手に取って閲覧できる。紙質、製本、印刷、レイアウトといった物理的要素が、いかに読書体験や思考のリズムを形づくるのかを、身体的にも体験できる。デジタル時代における本というメディアの未来を考える上でも、示唆に富んだ展示となっている。
世界のブックデザイン2024–25
会期:2025年12月13日(土)〜2026年3月22日(日)
場所:印刷博物館 P&Pギャラリー(東京都文京区水道1丁目3番3号 TOPPAN 小石川本社ビル)
時間:10:00〜18:00
休館日:月曜(2月23日を除く)、2月24日
3. セカイノコトワリ―私たちの時代の美術(京都国立近代美術館)
90年代以降の日本美術を横断する、20人の作家たち
本展は、世界のグローバル化が進み、日本人作家の国際的な発表機会が広がった1990年代以降の美術表現を軸に、20人の作家による実践を紹介する。写真、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど多様なメディアを通して、歴史や身体、アイデンティティ、社会構造といった主題が、それぞれ異なる方法で掘り下げられていく。
展示構成の特徴は、作品を単に並べるのではなく、会場を巡る体験そのものを思考のプロセスとして組み立てている点にある。藤本由紀夫の光や音を用いたインスタレーション、AKI INOMATAによる人間以外の存在との関係を可視化する作品、時間や生の感覚を扱う宮島達男や石原友明の実践に加え、日常的な素材や偶発的な現象を扱う毛利悠子の作品などが展示される。「セカイノコトワリ」というタイトルが示す通り、本展は既存の概念や固定化された意味づけから距離を取りながら、私たちがどこに立ち、何を拠りどころに世界と関係を結んでいるのかを問い直す場となっている。
セカイノコトワリ―私たちの時代の美術
会期:2025年12月20日(土)〜2026年3月8日(日)
場所:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町 岡崎公園内)
時間:10:00〜18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(2月23日は除く)、2月24日
4. テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート(国立新美術館)
YBAを起点にたどる、90年代英国美術の挑発と実験の余波
イギリス・テート美術館のコレクションを中心に、1990年代の英国美術が放った革新のエネルギーを多角的に紹介する企画展。約60人の作家による約100作品を通して、当時のクリエイティブな熱狂が、いかにして国際的なアートシーンの潮流を塗り替えていったのかを検証する。
本展の軸となるのは、1988年にダミアン・ハーストがロンドン東部の倉庫街で企画した伝説的展覧会「フリーズ」を起点に登場した、YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の動きだ。挑発的な表現やメディア戦略を武器に、アートと大衆文化、個人的経験と社会的緊張を結びつけた彼らの活動は、90年代の英国美術を一躍世界的な注目の的へと押し上げた。会場では、ダミアン・ハースト、ジュリアン・オピー、ルベイナ・ヒミド、スティーヴ・マックイーン、トレイシー・エミン、ヴォルフガング・ティルマンスら、サッチャー政権後の緊張感を孕んだ社会状況の中で台頭した実験的作家たちの作品を展示。絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど多様な表現を通じて、90年代英国美術のダイナミズムと、その影響の広がりを体感できる構成となっている。
テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート
会期:2月11日(水祝)〜5月11日(月)
場所:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00〜18:00(金土は20:00まで)
休館日:火曜(5月5日を除く)
5. ザドック・ベン=デイヴィッド「セカンド・ネイチャー - Second Nature -」(GYRE GALLERY)
繊細さとスケールが交錯する、金属の植物群
ロンドンとポルトガルを拠点に活動し、彫刻やインスタレーション、パブリック・アート作品で知られるザドック・ベン=デイヴィッドの個展。1988年にヴェネチア・ビエンナーレでイスラエル代表を務め、世界各地のビエンナーレや美術館で作品を発表してきた。金属を使った作品が多く、繊細なミニチュア作品と大きなインスタレーション作品の両方を作り続けている。
本展では、異なる時期に制作された作品が同じ空間に集う。最大で約2万7000点におよぶエッチング加工されたスチール製の花々が並ぶ大型のインスタレーション作品《Blackfield》や2000点以上の手書きの鮮やかな蝶や昆虫によって構成される《The Other Side of Midnight》のほか、アルミニウム彫刻の《Evolution and Theory》や、映像作品《Conversation Peace》と《Same place Other Times (Panorama)》、さらに木や花のイメージを用いた新作のアルミニウム彫刻などが展開される。ベン=デイヴィッドが自然界から選び取ったモチーフは、全ての作品に通底している。それらは、人間が自然を外部の対象として眺めてきた近代的な視点を揺さぶり、私たち自身の立ち位置を問い返す。繊細さとスケール感が行き来する展示空間は、自然との関係をあらためて考えるための思考の場となるだろう。
セカンド・ネイチャー - Second Nature -
会期:2月14日(土)〜4月19日(土)
場所:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
時間:11:00〜20:00
休館日:2月16日
































