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  • 2023.08.04

世界遺産アクロポリスへの入場者数を9月から制限。オーバーツーリズムが深刻化

ギリシャ政府は8月2日、アテネのアクロポリスで9月から時間帯による入場制限を設けると発表。ギリシャで最も有名な観光地であるパルテノン神殿遺跡への入場者数は、1日2万人までとされる。

ヨーロッパ南部で猛暑が続く中、ギリシャではアテネのアクロポリスなど古代遺跡各所で、観光客の入場が一時停止された(2023年7月20日撮影)。Photo: Milos Bicanski/Getty Images

ユネスコ世界遺産に登録されているアクロポリスのパルテノン神殿遺跡には1日2万3000人もの観光客が訪れるが、そのほとんどは昼前にやって来る団体客だという。こうした集中による過密状態を防ぐため、ギリシャのリナ・メンドーニ文化相が新たな規制の必要性を示したとAP通信が伝えている。

メンドーニ文化相はAP通信の取材に、「新たな措置は、我われにとって最大の問題である遺跡保護のためであり、かつ観光客により良い体験をしてもらうためです」と答えた。

同文化相はまた、ラジオ局リアルFMのインタビューでこう話している。

「観光が我が国にとって重要な産業であるのは明らかです。しかし、オーバーツーリズムで遺跡が損なわれないような方法を考える必要があります」

メンドーニ文化相によれば、9月4日から入場制限の試行が開始され、2024年4月1日からは恒久的な措置となる。ユネスコの世界遺産に滞在時間の制限はないが、同文化相が指摘する懸念点は、1日の入場者の約半数をグループツアーやクルーズ船の寄港地観光参加者が占めることだ。こうした観光客のアクロポリスでの滞在時間は平均45分だという。

アクロポリスへの夏期の入場時間は基本的に午前8時から午後8時までだが(注:一部の曜日は最終入場時間が異なる)、入場者数は時間帯によって変動する。特に、1日の来場者の半数が訪れる午前8時から正午では、開場後の1時間に3000人、2時間目には2000人が押し寄せる。

一方で、気候変動への懸念も高まっている。昨年は300万人以上がアクロポリスを訪れるなど、ギリシャ経済は遺跡観光に大きく依存している。それでも当局は、「前例のない熱波」が続いた7月、観光客や従業員保護のため複数の人気観光スポットで入場を一時停止した。最高気温が48度にもなった連日の猛暑の中、3万本の水が配られ、アテネの黄金時代を象徴する神殿には日陰になる場所を設けるなどの措置が取られている。(翻訳:石井佳子)

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