リビア大洪水で古代遺跡から新たな建造物を発見。老朽化したダム決壊が引き金
9月上旬にリビアを襲った大洪水で壊滅的な被害を受けた北東部の都市、デルナに近い古代ギリシャの遺跡で、長い間埋もれていた建造物が姿を表した。しかし、災害の規模があまりにも大きく、保存のための対応は困難を極めている。
リビアの地元当局は、9月10日の記録的大雨による紀元前631年建設の古代ギリシャの都市、キュレネの被害状況を調査中に、この建造物を発見した。紀元前4世紀に農業と商業の中心地として栄えたキュレネには、ゼウス神殿やアポロ神殿といった考古学的価値の高い遺跡がある。
しかし、この大雨でデルナ近郊の老朽化したダムが決壊。リビア東部全域が大洪水に見舞われ、キュレネの考古遺跡も援助を必要としている。世界保健機関(WHO)が22日に発表したところによると、洪水による死者は4014人、行方不明者は8500人以上にのぼる。
デルナ近郊の洪水は、ギリシャ、トルコ、ブルガリアにも甚大な被害をもたらした「ストーム・ダニエル」によって引き起こされた。世界気象機関によると、強風を伴ったこの嵐で鉄砲水が起き、リビアでは観測史上最高の24時間雨量を記録している。
リビアで決壊した2基のダムは、1970年代に粘土や岩で造られたもので、すでに90年代から老朽化への懸念が指摘されていた。しかし、カダフィ大政権下の腐敗と、2011年のカダフィ失脚後の政情不安により、必要な維持管理が行われてこなかった。
リビア労働組合連盟のネルミン・アル・シェリフ代表は、米ブルームバーグ通信にこう語った。
「ダムには、過去の政権の時代から亀裂などの問題がありました。改修の要求があり、そのための予算が確保されたにもかかわらず放置されたのです。気候変動は、単なる話題ではありません。まさに現在進行形の危機です。しかし、ここでは多くの過ちが犯されてきました」(翻訳:石井佳子)
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