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国際社会も注目。対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド

海外メディアも注目していた、韓国人窃盗団が日本の寺院から盗んだ仏像の所有権をめぐる裁判。この度、韓国の高等裁判所は、仏像の所有権は観音寺(長崎)にあると認めた。

2012年に日本の観音寺から盗まれた、全長約50cmのブロンズ製仏像。Photo: Tsushima City Board of Education

渦中の仏像は、450年以上前につくられた観世音菩薩坐像だ。観世音菩薩は、仏教では「世の人々の音を聞き分け、苦悩する者に救いを与える」と言われている。

英字版朝日新聞によると、この菩薩像を巡る一件は、国際的な主導権争いの中心になっている。同像は、2012年に韓国の窃盗団によって長崎県対馬の観音寺から盗まれたが、翌年、韓国捜査当局はこの窃盗犯を逮捕。仏像は韓国政府に没収された。そして2016年、観音寺は日本政府の支援を受け、返還を求めて提訴した。

しかし、韓国瑞山市の浮石寺も、この像の所有権を要求。同寺によると、観世音菩薩は14世紀、倭寇(わこう)によって盗まれたという。

2017年、韓国の大田地方裁判所は、仏像が「窃盗・略奪 によって日本に移ったとみなすのが妥当」とする判決を下し、韓国政府が即日控訴していた。

そして2023年2月1日、韓国の高等裁判所は、この像が浮石寺から略奪された可能性が高いと判断したが、現在までに同寺は一度廃寺されており、現在の浮石寺が14世紀に存在した寺と同じであるという証拠はないとして、所有権を否定した。

一方、観音寺は、日韓両国の民法上の所有権取得に必要な期間である20年以上仏像を所有しており、「取得時効」が成立している。

観音寺の現住職である田中節竜は2022年、韓国の裁判所に対し、「伝説によると、1526年に観音寺を創建した僧侶が朝鮮半島を旅した際に、この像を受け取った」と証言した。

観世音菩薩は「国際法の原則を考慮しながら日本に返還される」判決だったと英字版朝日新聞は報じている。しかし、浮石寺は高等裁判所に上告する方針だという。(翻訳:編集部)

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