元ごみ収集業者の男性が歴史的大発見に貢献。イタリアの温泉地で多数の古代ブロンズ像が出土
昨年11月にイタリア・トスカーナ州の温泉地で見つかった古代ローマ・エトルリアの貴重なブロンズ像群が、6月22日からローマのクイリナーレ宮殿で一般公開される。発掘調査が難航する中、この大発見に至った裏には元ごみ収集業者の協力があった。
紀元前2世紀から紀元後1世紀ごろのものと見られる20体以上のブロンズ像は、昨年11月の発見後、数カ月にわたり洗浄と修復が行われていた。ブロンズ像が出土したトスカーナ州シエナ県のサンカシアーノ・デイ・バーニ村はローマから160キロほど離れた場所で、かなり前から古代遺跡があると考えられていたが、発掘は難航。2019年以降はルネサンス期に公衆浴場があったとされる場所で調査が行われていたが、古代遺跡の手がかりはほとんど見つかっていなかった。
そんな中、この村でかつてゴミ収集業を営んでいた歴史マニアのステファノ・ペトリーニは、以前、友人の野菜農家の庭で古代ローマの柱の跡を見たことを思い出した。その柱は、考古学者たちが発掘作業を行なっていた場所の反対側にあったため見えなかったという。
ペトリーニの話を聞いた考古学者たちがその場所を掘り始めたところ、泥の中から古代ローマ人やエトルリア人(*1)が健康のために神に捧げたと思われる彫像や、耳や足など体の一部をかたどった彫刻、卵の殻や松の実、手術器具などが発見された。中でも注目されたのは、90センチメートルほどの病弱そうな少年のブロンズ像で、骨形成不全症だったと思われるこの少年像には、「Marcius Grabillo」(マルシウス・グラビーロ)という名が刻まれていた。
*1 古代ローマ以前にイタリア中部を支配した系統不明の民族。青銅器を使用し、独自の文化を発達させたが、徐々にローマ人と同化して消滅したとされる。
発見当時、考古学の専門家は「イタリアで発見された史上最大の古代ブロンズ像群」であるとして「歴史を塗り替える」ものだと語っていた。
また、イタリア文化省でトスカーナ州のシエナ、グロッセート、アレッツォを管轄する考古学者のアーダ・サルヴィは、ロイターの取材にこう答えた。
「この発見は、古代ローマ人やエトルリア人にとって、健康と宗教、スピリチュアリティの結びつきがどのようなものだったかを知る手がかりになります。ここにどんな意味があるか、研究して理解しなければなりません」
さらに、サンカシアーノの考古学調査プロジェクト責任者、エマヌエーレ・マリオッティは、発掘が進めばさらに多くの発見があると断言し、「まだ蓋を開けたばかりだ」と語っている。(翻訳:石井佳子)
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