2024年フリーズ・ロサンゼルス、初日に何がいくらで売れた? 話題をさらった7作品
アメリカ最大級のアートフェア、フリーズ・ロサンゼルスが3月3日まで開催された。2月29日のプレビューでは、高いもので200万ドル(約3億円)の作品が販売された。また、特に個展形式をとった作品の売れ行きが好調だったことが、複数のギャラリーの報告から明らかになっている。
「今年のフリーズ・ロサンゼルスは、初年度以来の大成功を収めました」と、ハウザー&ワースの共同社長マーク・パイヨは語る。
デイヴィッド・ツヴィルナーが初日に売り上げた作品のなかには、ジョー・ブラッドリー、ジョン・マクラッケン、スティーブン・シアラー、リサ・ユスカバーゲ、ダナ・シュッツ、スーザン・フレコンといった作家による作品が25万〜65万ドル(約3800万〜9800万円)で取引されていた。
セレブたちで賑わう本フェアの早朝に作品を販売したメガ・ディーラー以外にも、ケイシー・カプランやロバーツ・プロジェクツ、ティナ・キム・ギャラリーといったギャラリーも25万ドル(約3800万円)以上で購入された作品があったと報告している。
ムスタファ・アリ・クレイトンの作品を個展形式で公開したドミニク・ギャラリーによると、購入された作品のなかには1万2000〜10万ドル(約180万〜1500万円)の彫刻作品も含まれるという。また、ニューヨークのカスミン・ギャラリーはヴァネッサ・ジャーマンの作品が初日に10点落札されたと発表。世界有数の美術賞ハインツ・アワードを2022年に受賞したジャーマンの作品には2万5000〜6万5000ドル(約375万〜976万円)の値段がついたという。カリフォルニア州オークランドのpt. 2ギャラリーはムゼー・セセイの作品を出品したが、売上額は開示していない。
以下、フリーズ・ロサンゼルスの最初の数日間に売約済みとなった7作品を紹介する。
* 各見出しは、アーティスト名(ギャラリー名)/金額の順に表記
1. リチャード・セラ(グラッドストーン・ギャラリー)/3億円
初日に最も高額で売れたとギャラリーが報告した作品は、2009年にリチャード・セラによって制作された約198センチ四方の大作油絵《Pamuk》の200万ドル(約3億円)だった。この金額は、2014年5月にクリスティーズのオンライン・オークションで落札された額の2倍以上だ。グラッドストーン・ギャラリーはまた、キャリー・メイ・ウィームスの写真と、アーロン・ギルバートの絵画は、それぞれ12万5000ドル(約1900万円)で販売されたという。
2. ロイ・ホロウェル(ペース・ギャラリー)/6750万円
ペース・ギャラリーのブースで初日に売れた高額作品は、ロイ・ホロウェルの絵画《Split Orbs in yellow》(2023)だった。今回ホロウェルの作品は、コネティカット州にあるアルドリッチ・コンテンポラリー美術館で開催中の展覧会「Loie Hollowell: Space Between, A Survey of Ten Years」(~8月11日)と、同ギャラリーのニューヨーク(3月8日~4月20日)とあと1拠点で予定している個展にちなんで展示された。ペースはそのほかにもトニー・スミスとリー・ソンソンの絵画をそれぞれ25万ドル(約3750万円)と13万8000ドル(2070万円)で販売した。
3. キム・ユン・シン(リーマン・モーピン)/不明
リーマン・モーピンは、初日に韓国人アーティスト、キム・ユン・シンの木彫作品6点と絵画2点を販売したと発表した。キムは2024年1月に同ギャラリーに所属し、今月同ギャラリーのニューヨークのスペースで個展を開催する(3月14日~4月6日)。キムの彫刻作品は今年のヴェネチア・ビエンナーレでも展示される。
同ギャラリーはまた、ライザ・ルーの《Get Off My Cloud》(2024)が「ある著名なスイスのコレクション」に加えられ、ビリー・ザンゲワのテキスタイル作品2点が12万5000ドルから25万ドル(約1875万円~3750万円)の範囲内で、マンディ・エル=セーグの作品が5万5000ドルから7万5000ドル(約825万円~1125万円)の範囲内で、ロサンゼルスやシンガポール、チェコ共和国のコレクターに購入されたことを報告した。
4. ロバート・ロンゴ(タデウス・ロパック)/2億4000万円
タデウス・ロパックでは、ロバート・ロンゴの《Untitled (Julien)》(2016)が160万ドル(2億4000万円)アンゼルム・キーファーの《Sag mir, wo die Blumen sind》(2012/2022)が130万ユーロ(2億1100万円)で販売された。その他、ジョーン・スナイダーの《Even A Melon Field》(2020-23)が21万ドル(3150万円)、マーサ・ユングヴィルトの《Ohne Titel, aus der Serie "Goya"》(2023)が42万ユーロ(6832万円)、ジョナサン・ラスカーの《Why Opinions Form》(2021)が17万5000ドル(2626万円)で売れた。
ディーラーのタデウス・ロパックは声明で、初日の様子について、「これまでのところ雰囲気は非常に明るく、いつものように多くの人が訪れています。ヨーロッパや中国からのコレクターが何人か参加しており素晴らしいことだが、予想通り、売上のほとんどがアメリカのコレクターによるものです」と話した。
《Untitled (Julien)》が今回のフリーズで売り上げた最高額のロンゴ作品だが、ペース・ギャラリーでもロンゴの木炭画《Untitled (Dry Palm)》(2023)が70万ドル(1億500万円)で売れている。
5. エド・クラーク(ハウザー&ワース)/1億4300万円
ハウザー&ワースでは、高さが約180cmあるエド・クラークの絵画《Untitled》(2010)に95万ドル(約1億4300万円)で買い手がついたのをはじめ、所属アーティストの売れ行きは好調だった。
初日の主な販売結果は、リタ・アッカーマン《Sandman’s Dust 3》(2023)の42万5000ドル(約6400万円)、ファイアレイ・バエス《Balangandan (we are each other’s magnitude and bond)》(2024)の41万5000ドル(約6200万円)、フランク・ボウリング《Fishes, Wishes in Summertime Blue》(2016)の80万ドル(約1億2000万円)、ジョン・チェンバレン《MISCHIEVOUSMERRIMENT》(1999)の62万5000ドル(約9400万円)、チャールズ・ゲインズ《Numbers and Trees: Arizona Series 1, Tree #2, Eagle》(2023)の79万5000ドル(約1億1900万円)など。
6. サム・マッキニス(デイヴィッド・コルダンスキー)/2100万円
サム・マッキニスのソロブースで今年のフリーズ・ロサンゼルスに臨んだデイヴィッド・コルダンスキーは、フェア開幕後数時間で出展作品が完売したと報告。最高額は、既存の写真をもとに制作された絵画の一つ《Three Cowboys (Randall Cobb, Byron Jones, Jeff Heath)》の14万ドル(約2100万円)。その他は3万ドル(約450万)から。
同ギャラリーのパートナー、マイク・ホーマーは、プレス向けの声明でこう述べている。
「世界中の著名コレクターからマッキニスに寄せられた大きな反響は、彼の才能と長年人気を維持してきた実績を証明するものです。2025年初めにロサンゼルスのギャラリーで開催を予定している彼の個展も非常に楽しみです」
7. アニッシュ・カプーア(リッソン・ギャラリー)/1億2800万円
世界的アーティストのアニッシュ・カプーアが、相変わらずの人気を示したのがリッソン・ギャラリー。初日に《Mipa 5 Light to Prussian Blue Satin》が67万5000ポンド(約1億2800万円)で購入された。
同ギャラリーではまた、今年ヴェネチア・ビエンナーレに参加するオルガ・デ・アマラルの彫刻作品3点も、またたく間に売れたという。うち2点が各25万ドル(約3800万円)、もう1点は4万5000ドル(約680万円)。アマラルは今秋、パリのカルティエ現代美術財団での回顧展も予定されている。
その他、ロドニー・グラハムやヒュー・ヘイデンの作品、ケリー・アカシのガラスとブロンズによる彫刻2点、クリストファー・ルブランとリー・ランの絵画などに買い手がついた。
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