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  • 2024.07.05

今週末に見たいアートイベントTOP5: 貴重な資料でたどる高田賢三の仕事と生涯、リクリット・ティラヴァニら5人が表現する「物質性と言語」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

エリザベス・グラスナー「Head Games」(ペロタン)より、Elizabeth Glaessner Sphinx with arms, 2024 Oil on linen 137.2 x 241.3 cm | 54 x 95 inch Photo: Guillaume Ziccarelli Courtesy of the artist and Perrotin

1. 特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」(国立国際美術館)

梅津庸一《智・感・情・A》2012-14年 布、パネルに油彩 東京都現代美術館蔵 撮影:大谷一郎

梅津庸一の全仕事と活動を5章で辿る

1982年生まれの美術家、梅津庸一は2000年代半ばから創作を始め、抽象ドローイング、映像、陶芸、版画などジャンル横断的に作品を発表してきたが、同時に日本の美術(制度)史への愛憎半ばする批評的態度を表してきた。

本展は、人知れず手がけていた大量のドローイング群など、公私両方にまたがった仕事を紹介する「知られざる蒙古斑たちへ」や、「花粉」に例えられる多様な仕事と、そのひとつである私塾パープルームの活動を紹介する「花粉を飛ばしたい!」など、梅津の全仕事と活動を5章で振り返る。誰もが無縁でない制作という行為についてあらためて考えるきっかけを得、「美術とはなにか」「つくるとはなにか」を考える場となるだろう。

特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」
会期:6月4日(火)~ 10月6日(日)
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
時間:10:00 ~ 17:00(金土は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(祝休日は開館、翌日休館)

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2. 「Materiality and Language: Explorations in Form and Meaning Curated by Esthella Provas」(KOTARO NUKAGA 六本木)

展示風景

リクリット・ティラヴァニらが表現する物質性と言語

本展は、世界で最も影響力のある美術アドバイザーの 1人と称されるステラ・プロバがキュレーションを担当する。急激に情報化が進む現代において、物質性と言語が現代アートの表現と認識の主要な要素としてどのように機能するかについて、5人の国際的なアーティストの展示から考える。

出展作家は、アメリカのMoMA PS1で回顧展が開催されるなど、国際的に活躍するタイのアーティスト、リクリット・ティラヴァニのほか、アマドゥール、ステファン・ブルッケマン、ホセ・ダヴィラ、マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー。展示を通して、各アーティストが独自のアプローチで表現する「物質と言語」が互いにどのように影響し合うか、またその相互作用が現代社会における文化的・社会的文脈内でどのように働くのかを考察する。

「Materiality and Language: Explorations in Form and Meaning Curated by Esthella Provas」
会期:6月8日(土)~ 7月31日(水)
会場:KOTARO NUKAGA 六本木(東京都港区六本木6-6-9)
時間:11:00 ~ 18:00
休館日:日祝月


3. O JUN 「絵のある部屋」(void+)

《サービスルーム》展示風景

O JUNが仕掛ける実験的な「部屋」

1956年東京生まれ。多摩美術大学などで後進の指導に当たりながら、ドローイングやパフォーマンスなど、数々の作品を世に送り出してきたアーティスト、O JUNの実験的な個展。

《サービスルーム》と名づけられた部屋では、公開制作を実施する(7月6日・13日)。そこには作家も制作時期も異なる完成された数枚の絵が置かれており、O JUNが新たな絵の制作を進めることで、多様な背景を持つ絵画が空間を満たす。また別の部屋では、心を捉えて離さない事象や物事をテーマに、繰り返し描く行為である「反復」や「なぞり」が作品の変化や連続性にどう関与するかを探求した新作を披露する。

O JUN 「絵のある部屋」
会期:6月12日(水)~ 7月13日(土)
会場:void+ (東京都港区南青山3-16-14)
時間:12:00 ~ 19:00
休館日:日月


4. エリザベス・グラスナー「Head Games」(ペロタン)

Elizabeth Glaessner Mimesis, 2023 Oil on linen 40.6 x 30.5 cm | 16 x 12 inch Photo: Guillaume Ziccarelli Courtesy of the artist and Perrotin

唯一無二の手法で描かれた幽玄な世界

1984年、アメリカ・カリフォルニア州に生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動する画家、エリザベス・グラスナーは、油絵の具をキャンバスに垂らし、工業用ブラシやスクイージーなどの道具で押し広げ、重ね、拭いとるなどしながら神秘的で幽玄な人物像を描き出す気鋭アーティスト。まるで夢の中にいるような感覚をもたらすペインティングは、美術史、神話、記憶、ポップカルチャーからインスピレーションを得ており、既成の枠にとらわれない超現実的な世界を想起させる。

本展では、新作の大作2点と小品15点を発表する。いずれも、西洋文学やギリシャ神話に基づく物語など、グラスナーが長年関心を寄せてきた複数のテーマが継続されている。迫力ある大作はもちろんだが、小品もじっくり見てほしい。何層も丁寧に塗り重ねられた絵の具、そして絵の具に混ぜ込まれた小さなガラスビーズが、美しいテクスチャーを生み出している。ペロタンの2階には「ペロタン・サロン」が7月2日にオープンし、8月31日までオープニング記念のグループ展が開催されているので、合わせて楽しみたい。

エリザベス・グラスナー「Head Games」
会期:7月2日(火)~ 8月31日(土)
会場:ペロタン(東京都港区六本木 6-6-9 ピラミデビル 1F)
時間:11:00 ~19:00
休館日:日月


5. 髙田賢三 夢をかける(東京オペラシティ アートギャラリー)

1982-1983年秋冬コレクション ©RICHARD HAUGHTON

髙田賢三の独創性を数々の作品から振り返る

今も世界中で愛されるファッションブランド「KENZO」を1970年に立ち上げ、2020年に逝去したデザイナー、髙田賢三の回顧展。若い頃から第一線で活躍した髙田は、卓越した独創性を通じて、国境や文化、性別といった境界を自由に飛び越え、これまでの西欧中心の伝統文化にとらわれない全く新しい衣服を提示し続けてきた。

本展では髙田のファッションの変遷を実際の衣装でたどるとともに、幼少期から描いていた絵画やアイデアの源泉となった資料、衣装のデザイン画などを紹介する。また、髙田の代名詞ともいえる世界各地の民族衣装に着想を得た 1970~80 年代のフォークロア作品を一堂に展示。ほかにも、集大成となった KENZOブランドでの最後のショー、「30ans トランタン 」をデジタル化してダイジェスト上映するなど、ここでしか見ることができない貴重な資料の数々が集結する。

髙田賢三 夢をかける
会期:2024年7月6日(土)~ 9月16日(月)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
時間:11:00 ~ 19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、8月4日

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