MoMAの倫理的問題が明るみに。障がいのある同館ベテラン職員が上司を差別と不当解雇で訴える
ニューヨーク近代美術館(MoMA)に長年勤務していた職員が、同館と、同館のミシェル・エリゴット公文書館・図書館・研究コレクション主任、人事担当のオデッサ・マツブラとキャロライン・クレメンツを相手取り、差別的行為と不当解雇を主張する訴訟を起こした。
訴訟を起こしたのは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のライブラリー・コレクション・コーディネーターとして写真部門に17年間勤務していたフィリップ・パレンテ。彼の代理が提出した訴状によると、パレンテは動悸や失神を引き起こす上室性頻拍の症状を持ちながら仕事に従事していたが、同僚の数名がパレンテの病状に配慮しなかったとしている。
US版ARTnewsが閲覧した裁判文書によると、パレンテは、MoMAの上級職員が彼の病状に対して適切に対応せず、最終的に、コロナ禍で認められていたリモート勤務の承認を撤回するに至ったと主張している。パレンテはまた、同美術館の職員に根拠のない窃盗の言いがかりをつけられ、それが突然の解雇につながったと主張。それらの行為を「違法、差別的、報復的行為」と表現している。
訴状によると、パレンテは2021年9月、リモート勤務のための申請書を提出した。その翌月、同館の人事部長を務めるオデッサ・マツブラは、「あなたが職務の本質的な機能を果たすためには、当館の敷地内に物理的に存在しなければならない」としてこの要求を却下。パレンテは、マツブラの判断は2020年3月にコロナ禍の対応として1週間のうち一部のリモート勤務を許可した上司の承認を無視するものだと訴えている。
その中でパレンテは、ミシェル・エリゴット公文書館・図書館・研究コレクション主任が免責申請についての議論に応じなかったとも主張。また訴状では、パレンテが人事部と解決を図ろうとしたことに対してマツブラが報復を行い、彼の美術館での役割を「取るに足らないもの」と表現、さらにパレンテが部署から写真資料を盗んだという嘘を捏造したとしている。さらに、MoMAの職員が障がいを持つ職員を保護する州法に違反したと述べている。
原告の弁護士であるクリストファー・バーリンギエリは、US版ARTnewsに寄せたコメントの中で、この訴訟は、美術館が障がいを持つ従業員への対応を誤った証拠と、MoMAの倫理的な問題を提示していると語った。また、同館が掲げている職場における包括性の方針と実践に反していると主張している。
US版ARTnewsは美術館の担当者にコメントを求めたが、現時点で回答はない。(翻訳:編集部)
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