クリスティーズ、世界的NFTブームを後押ししたデジタルアート部門を閉鎖。今後も販売は継続
クリスティーズがデジタルアート部門を閉鎖し、同部門を率いていたニコール・セールス・ジャイルズが退任した。NFT市場の冷え込みが続くなか、同社は今後も20・21世紀美術の文脈でデジタル作品を扱う方針を示している。

クリスティーズがデジタルアート部門を閉鎖し、同部門を率いていたニコール・セールス・ジャイルズが退任することを、デジタルカルチャー・メディアのNow Mediaが報じた。セールス・ジャイルズ自身も事実を認め、クリスティーズの広報担当者は同メディアに対して次のようにコメントしている。
「デジタルアートの販売を見直す戦略的決定を下しました。当社は今後も、20・21世紀美術という広義の文脈のなかで、デジタルアートの販売を続けていく予定です」
NFTやAIアートをセカンダリー・マーケットに広めた先駆的存在とされるのが、クリスティーズのデジタルアート部門だ。2021年に出品されたビープルの《エブリデイズ:最初の5000日》は6930万ドル(当時の為替で約75億円)で落札され、デジタルアート史上最高額を記録した。このオークションはクリスティーズが初めてNFTを扱ったもので、これを機に、2021〜2022年のNFTブームが引き起こされたとされる。
しかし市場の熱狂は長続きせず、NFT取引は急激に冷え込んだ。ビープル作品が落札された翌2022年、クリスティーズのNFT売上は590万ドル(現在の為替で約8億7000万円)にとどまり、前年から96%の大幅減となった。さらに、NFTeveningが2024年8月に公表した調査では、NFTプロジェクトの96%が消滅したとされ、所有者は平均で投資額の44.5%を失っていると報告されている。
クリスティーズの競合であるサザビーズも、メタバース関連を含むデジタルアート部門から少なくとも4人の従業員を解雇した。同オークションハウスに現在残っているのは、デジタルアート・NFT担当バイスプレジデントのマイケル・ブーハンナと、プレセール・コーディネーターのデイヴィス・ブラウン、そしてもう1人のスタッフだけだ。
US版ARTnewsはクリスティーズにコメントを求めたが、返答は得られなかった。(翻訳:編集部)
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